金融庁金融審議会の市場制度ワーキング・グループがこのほど、国際金融センターの実現に向けた第1次報告書をまとめた。昨年10月以降、コロナ後の新たな経済社会を見据え、経済の回復と持続的な成長に向けて、成長資金の供給、海外金融機関等の受入れに係る制度整備、金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等について検討を進めてきた。報告書では、我が国金融市場が世界及びアジアにおける国際金融センターとしての機能を向上させることは、国内の雇用・産業の創出や経済力向上の実現に資するとし、海外からの人材・資金・情報の集積を促進する海外の資産運用等の金融ビジネスを日本国内で行いやすくすることで、投資運用業者等の金融事業者や高度金融人材の受入れを促進していくことが重要と指摘。国際金融センターの実現のためには、受入れのための環境整備が喫緊の課題とし、国内外の金融機関が同じ競争条件で国際的なビジネスを行うための制度整備も必要と指摘している。
報告書はまず、海外の投資運用業者等の受入れに係る制度整備を指摘。日本国内において投資運用業を行うためには、原則として、金融商品取引業者としての登録を行うことが必須。一方で、適格投資家向け投資運用業における登録要件の一部緩和、特例業務制度も置かれている。しかし、現行制度では主として海外の資金を運用する海外事業者を必ずしも想定せず、参入時やその後の監督において、海外でのトラック・レコードや現に海外当局による監督等を受けていることを勘案していない。外国法人や一定の資産を保有する外国居住の個人を対象とする投資運用業については、通常の投資運用業と同等の規制とする必要性が低いと考えられることから、適格機関投資家による出資を必須とせず、出資人数の制限もない形で、届け出により日本国内で業務を行えるよう、新たな類型を整備することが適切であると指摘した。
そのうえで、新たな類型に当てはまる投資運用業は「組合型集団投資スキーム持分の自己運用」を対象とし、行為規制・監督対応等も適格機関投資家等特例業務と同様、通常の投資運用業者と同様の行為規制や当局による監督対応・立入検査等の対象とすることが適当とした。
海外投資家が主な顧客であるファンドであっても、海外資金を呼び水にして国内の投資を喚起することから、プロ投資家による出資を50%未満で認めることが適当とした。
海外の資金のみを運用する事業者が、日本で引き続き業務できるよう、登録を得るまでの一定期間に関して届出で可能となるよう特例を整備すべきと指摘。その際、恒久措置とするのではなく、5年程度を移行期間とし、それまでに恒久的な類型に移行するよう求めることが適当とし、特例自体も既存業者との競争上の公平性や投資者保護の観点から、3~5年程度の時限的な措置として設けることが適当とした。
報告書では、金商法上の制度整備以外の取組みとして、海外の投資運用業者等の受入れ促進のため、制度整備以外に、税制面でのボトルネック除去、英語対応、在留資格の緩和など日本国内でビジネスを行いやすくする環境整備も重要と指摘している。
なおWGは、引き続き、成長資金の供給のあり方、国内顧客に関する情報授受規制などの課題について検討を進める。
2021/1/5&15号 不動産経済ファンドレビュー