三井住友トラスト基礎研究所は、「不動産投資に関する調査 2020年」と題した調査結果をまとめた。今回は定例の質問項目に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大により投資方針がどう変化しているかを各投資家層に質問した。感染症拡大前と比較して「変化があった」と回答した割合は、不動産投資において年金基金が26%、機関投資家が38%、インフラ投資において同13%、20%であり、いずれの投資においても「変化がなかった」回答が大きく上回った。今後の不動産投資方針については、昨年調査と比べて年金基金では「投資検討すべき投資対象の1つ」が22%から6%に大きく減少、現状維持が大きく増加。一方、機関投資家では「不動産投資を実行、増やす予定」が62%まで増加、過去5年で最大となり、コロナ禍においても積極的なスタンスがうかがえる結果となった。年金基金と銀行、保険会社など機関投資家294者にアンケートを送付し84者から回答を得た。有効回答率は28.6%。
現在オルタナティブ商品の投資残高を有している投資家は、年金基金、機関投資家ともに90%を超え、同商品への投資が浸透している。投資対象は、年金基金・機関投資家ともに不動産が最多。不動産投資の運用資産の内訳は、年金基金では「国内不動産私募ファンド(オープンエンド型)」が35%で最多となり、「海外不動産私募ファンド(オープンエンド型)」、「海外リート」と「海外不動産デット」の保有割合が増加した。機関投資家では「Jリート」が25%を占め、「国内不動産私募ファンド(オープンエンド型)」の19%を上回った。
不動産投資を行う際のレバレッジ水準は、一般に保守的と考えられる40%未満の回答割合が、年金基金では82%だったのに対して、機関投資家は45%にとどまっており、レバレッジの許容水準に差が見られる。不動産投資を行う際の投資期間については、年金基金では「7年以上~10年未満」と「10年以上」を合計した比較的長期の割合がここ3年間で39%から56%に高まり、機関投資家ではどう59%から52%に低下、真逆の傾向を示している。投資検討可能なプロパティタイプは、年金基金では「物流施設」が24%と目立って高い。機関投資家では「オフィス」「賃貸住宅」「物流施設」の3タイプが同割合で最多となり、分散傾向が強い。また、コロナ禍において、「ホテル」は年金基金、機関投資家とも減少した。
不動産投資を行う場合に期待するリターン水準は、「単年度配当利回り(不動産資産)」の平均値が、年金基金、機関投資家ともに4%台前半。IRRの平均値は、年金基金が5.92%、期間投資家が5.67%となり、昨年調査からほぼ横ばいだった。
インフラ投資に必要な条件については、年金基金では「投資実行中における適切な運用報告」、機関投資家では「投資実行時の十分な情報開示」が最多。今後のインフラ投資の方針については、年金基金では「投資を行っておらず、今後も投資する予定はない」、機関投資家では「すでに投資しており、今後、投資を増やす予定」が最多だった。
2021/4/5 不動産経済ファンドレビュー