誰にも看取られることなく、一人で亡くなることは「孤独死」ではなく、「室内死」ー。神奈川県居住支援協議会では、不本意にも一人で亡くなった人の尊厳を守り、マイナスイメージを払しょくするするため、今後「室内死」という言葉を積極的に発信していくという。高齢者の居住支援の足枷となっているのは「孤独死」リスクだが、言葉を変えていくほか、オーナー向けに手引書「安心賃貸経営の手引き」~貸主向け保険商品ガイドブック~を一般社団法人・日本少額短期保険協会監修のもと作成し、ひろく周知させていきたい考えだ。
神奈川県居住支援協議会がまとめた「安心賃貸経営の手引き」は全24頁からなり、これからの賃貸経営における顧客層として高齢者の取り込みが求められていること、起こり得るリスクへの備えとして、予防対策としての見守り、および事後対策としての保険の活用を薦めている。
総務省の人口統計(2019年)および国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(2018年集計)によると、神奈川県の人口919万人のうち、65歳以上は232万人と4人に一人が高齢者となっている。全国的にみると高齢者の割合は少ないほうだが、2045年には65歳以上の人は292万人に達すると予測されている。その一方、これまで貸家市場におけるメインターゲットである、若年層およびファミリー層(15~64歳)の人口は577万人いるものの、2045年には449万人に激減する。賃貸住宅の空き室の増加傾向は続くことは確実であるため、これからの賃貸経営の顧客層は「高齢者を想定されるリスクに柔軟に対応しながら受け入れていく方法を検討してみては」と提案している。
そもそも高齢者の賃貸居住はデメリットばかりではなく、①賃貸市場では引き合いが弱い1階が、高齢者には好まれる傾向にあること ②駅から離れていても病院や役所への行きやすさが優先されやすいこと ③家賃や間取りを重視し、築年数の古さにはさほど抵抗がないことー などと指摘。そのため条件不利な賃貸住宅でも、空室を埋めやすいとしている。また、室内死は必ずしも高齢者ばかりではなく、少額短期保険協会の調べで60歳未満の現役世代が4割を占めていることなどを紹介。「必ずしも高齢になるにつれて室内死のリスクが高まるわけではない」と注意を促している。
室内死の予防策として、万が一入居者が死亡しても早期に発見できる見守りサービスの利用が効果的で、介護保険制度など制度別で利用できるサービスの種類とサービスの対象となる人、問合せ先、および民間企業が実施している見守りサービスなどを一覧化。さらに事後対策としての保険として、孤独死保険の商品概要についても盛り込んでいる。家主加入型、入居者加入型から17商品を紹介している。入居者が亡くなった場合の、事故発生から保険金支払いまでの流れをフローチャートで示し、家財整理業者の選定のポイントについても言及している。