トップインタビュー マンション管理の未来 第44回 旭化成不動産コミュニティ社長 小島 速氏(下)

超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化という「二つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、建替えや等価交換マンションの管理実績がある旭化成不動産コミュニティの小島速社長に、重点的に取り組んでいる課題や今後の展望などを聞いた。

##管理員と清掃員の労働賃金
        管理の継続性を安定的に確保するには

――コロナ禍でのマンション管理業務はどう変わったか。
 小島氏 緊急事態宣言下において旭化成グループ全体の方針として出勤をできるだけ見合わせた時期もあり、当初は困惑した。出勤しないとできない業務があるため週1~2日は出勤したが、組合に報告する月次決算が1~2カ月分滞留するという事態が起きてしまった。管理組合の理事会には理解を得たものの、やはり派遣社員を抱えるリスクが要因としてあったと思う。理事会や総会については、4月、5月の両月は延期した。
その一方で、フロントは在宅勤務をメインにした。出勤しなければできない業務もあったので最小限で出勤したが、やってみると半分くらいの出勤率でも業務が回ることが証明できた。フロント社員は出勤が抑えられることで通勤時間がなくなり、モバイルパソコンを支給しデスクワークは自宅でできるので残業時間が大幅に減った。フロント社員の出勤率は6割ぐらい、事務は5割で半分ずつ二交代制にし、管理職は8割程度で、当社全体では5~6割の出勤率で業務を回していけた。
 現場の管理員や清掃員は居住者の生活を守るために出勤してもらった。在宅勤務の居住者が増えて、管理マンションではゴミが増えたので、大いに迷ったところではあったが稼働を決めた。業務委託でビルメンテナンス会社から管理員・清掃員を派遣しているので、うまく連携して乗り切れたと思っている。

――防災にどう対応するか。
 小島氏 地震については一定のマニュアルを作って対応できると思うが、特に最近、大きな影響を受けたのが台風だ。昨年秋に台風15号と19号の襲来を受け、それが教訓になった。緊急時に誰が動くのかとなると、ほぼ現場対応にならざるを得ない。会社の事務所では緊急対策本部を立ち上げ、社長や課長など3名以上が待機して電話を受けた。管理組合からすれば何かあるとすぐ管理会社の社員が飛んで来てくれるという期待があるのだろうが、旭化成グループの方針としても社員に無茶をさせないことになっており、これまでとは対応が異なるのだろうと思っている。最低限の安全の配慮を施した上で、災害時に社員が現場に行けない場合はビルメンテナンス会社とも連携して対処する。ビルメンテナンス会社とは緊急時は何をどこまでやってもらえるかを共有し、どのように動くかをあらかじめ決めている。
 管理会社が緊急対応を行うには限界がある。管理組合がお金を出して対策を講じなければ防ぎようがないことがあるので、組合に理解してもらい次の布石を打っていくしかない。台風襲来によるお金のかかり方を理解してもらうには、昨年の台風の経験が教訓として学ぶ機会になった。

――政策要望は。
 小島氏 当社が今、財務的に苦しいのは管理員と清掃員の労働賃金だ。最低賃金はずっと上がり続けているにも関わらず、管理委託費を値上げせずに耐えている。修繕積立金は上げていけるのだが、管理委託費の値上げを管理組合に受け入れてもらうのは難しい。
 管理員と清掃員の労働賃金の値上げを管理会社が負担し続けており、管理組合も値上げを承諾してくれないということが他社でも発生していると聞く。この状態が築40年以上の財政が厳しいマンションで多く、管理会社のリプレイスを検討するきっかけになっているようだが、こういう状態では管理の継続性が安定的に確保できず管理不全に陥るマンションが増えてしまうのではないかと懸念している。マンション管理会社が利益を削って耐える状況が、継続性があるものとは決して思えないので、行政の配慮を求めたい。
 加えて管理業務主任者の社会的な地位の向上のための策を考えていかなければならないと感じている。考え方の違う居住者同士の暮らしを支える価値のある仕事だ。管理業務主任者が力をつけていくことはもちろんだが、地位向上のための策も必要だ。

##小島 速(おじま・はやし)氏
1987年3月富山大学経済学部経営学科卒業、同年4月旭化成ホームズ株式会社入社、その後同社浜松西営業所長や大宮支店長、栃木支店長などを経て、2014年旭化成不動産レジデンス株式会社に出向。2015年~2017年同社再開発営業部、2017年旭化成不動産コミュニティ株式会社に出向。2017年~2018年同社マンション管理部長、取締役に就任、2019年同社代表取締役(現職)。

月刊マンションタイムズ2021年1月号

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