日本マンション管理士会連合会は、2020年度の全国研修会をオンライン形式で開催した。6月に成立した改正マンション管理適正化法の内容や改正に伴いマンション管理士が対応すべき点などが説明されるとともに、東京都でスタートした管理状況届出制度の運用に当たり東京都マンション管理士会が連携している内容が紹介された。冒頭に挨拶した瀬下義浩会長は、改正法で自治体がマンションに関する独自の施策を展開するのに伴い、各地の管理士会が自治体と連携する方策を模索するプロジェクトチームを立ち上げる方針を表明した。約260人が参加した。
瀬下会長は「法改正により自治体がマンション管理適正化推進計画を策定し、計画を進める中で管理士や管理士会が重責を担う部分も出てくる。自治体と協力体制を取るための協議ができるよう、日管連としてプロジェクトチームをつくる」と表明。自治体と管理士会が連携を取る上でのノウハウを整理するほか、事業を進める上で管理士会の間での人員やノウハウの活用などが模索される見込みだ。また、日管連が実施しているマンション管理適正化診断サービスで認定された管理に関する評価が、改正管理適正化法で創設される管理計画認定制度でもリンクされるための検討も見込まれる。
研修会では、まず国土交通省の立岩里生太・住宅局市街地建築課マンション政策室長が改正管理適正化法と改正マンション建替円滑化法の内容を解説し、「改正法が施行されると、専門家や専門機関の活用が重要になり、とりわけマンションに関してはマンション管理士が第一の専門家になる。改正法の運用に協力を賜りたい」と内容への理解を求めた。続いて瀬下会長が「マンション関連法改正の理解とマンション管理士の対応」と題して講演し、改正建替円滑化法により敷地売却制度の適用対象が拡大されるなど再生の選択肢が増える点について「建替えや敷地売却でも管理組合の合意形成が重要であり、検討を進める上では法定業務で助言や指導を行うマンション管理士の役割が大きくなる」と指摘した。改正管理適正化法については、自治体がマンション管理適正化に向けた施策に取り組むに当たり、「法に基づいて実態調査を行う上でノウハウの少ない自治体への協力や、管理不全に陥るマンションに助言や指導を行い、再生の方向性を導き出す役割も高まる」と述べたほか、管理計画認定制度に関しては「認定のジャッジや現地の調査を行う可能性もあり、自治体だけではわからない部分にも対応できることが求められる」と専門性を生かした対応ができるよう体制を整えておく必要があると提起した。管理計画認定制度では認定事務を指定認定事務法人に委託できる規定があることから、「管理士会に委託される可能性もあるので、受託できる体制を整えたり、行政の協力者として業務を担える組織である点を自治体と交渉してほしい」と呼び掛けた。
自治体との連携では、東京都マンション管理士会が東京都と連携した先行事例があり、同会の親泊哲理事長が東京都のマンション施策と連携の現状について紹介した。4月からスタートさせた管理状況届出制度では、届出の内容から管理不全の兆候が見られるマンションを訪問調査する上で調査を担当する会員との接点となる事務局員を複数配置し、すべての区市の依頼に基づく業務に対応できるチームを組成した事例を報告。また、制度への疑問や管理・再生への相談に当たる「東京都分譲マンション総合相談窓口」の相談員を務めた際、マンションの維持管理に関する助言・指導などの業務を3年以上の務めた管理士と1年以上務めた管理士を組ませ、経験の差のカバーや実務経験の蓄積に生かした点なども紹介した。親泊理事長は「管理士に経験や能力の差があるのは認めざるを得ないが、経験や能力はひとつでも多くの実務に携わることで培われる。経験豊富な管理士と実務経験の蓄積が求められる管理士がペアになり実務を担当できる仕組みが構築できたのは大きい。ただ、それには以前からの協力などで得た信頼関係も寄与しており、関係継続のための努力も引き続きの課題だ」と、関係構築や体制の整備の重要性を説いた。(研修会実施日=2020年11月11日)
2020/12/1 月刊マンションタイムズ