不動産経済研究所が発表した2020年のマンション供給予測によると、首都圏のマンション供給は2020年比で31.1%増の3.2万戸に回復すると予測した。2019年との比較でも増加となる。2020年は前年比21.9%減の2.44万戸を見込んでおり、緊急事態宣言中の営業自粛が響いた格好だ。同時に発表した近畿圏のマンション供給は2020年比で29.5%増を予測する。
2021年は首都圏全エリアで回復し、前年比31.1%増の3.2万戸と再び3万戸台の供給となる。ポイントとしては在宅ワークの増加などで郊外マンションの供給が増加。大手デベロッパー、中堅デベロッパーともに幅広いエリアで供給を積極化するとみる。
その他のポイントは以下。
引き続き都区部の大規模案件がけん引、近郊エリアも注目タワーが始動。
◆都心や湾岸のタワー・大型案件は堅調維持、周辺都市でも注目のタワー案件が登場。
◆都区部は'20年比30.8%増の1万4,000戸、湾岸に加えて城東エリアなどの大型に注目。
◆埼玉県が48.1%増の4,000戸と大幅増。都下は3,000戸、神奈川県も7,000戸に回復。
在庫は6,000戸台を維持。着工は'20年1~10月で前年同期比8.0%減。
◆在庫は11月末で前年同月末比9.1%減の6,841戸と減少。年末在庫も7,000戸台。
◆着工は'20年1~10月が8.0%減の4万7,503戸。東京都二ケタ減も埼玉県と千葉県は増加。
◆'20年1~11月の平均価格は6,254万円。'90年以来2度目の年間平均6,000万円台へ。
ポストコロナで郊外巻き返しも駅近中心、都心の超高層人気は変化せず。
住宅ローン減税の適用拡大で40~50㎡前後のコンパクト住戸の人気UPも
◆2020年1~11月のマンション供給社数は114社とわずかに増加(前年同期110社)
◆都心の高級物件の人気変わらず高値安定、郊外も駅近中心で価格下落の兆候見られず。
◆商品企画のテーマもコロナ禍で一変。専有部、共用部ともに在宅勤務対応が急務に。
地域別の供給動向
13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 17年 | 18年 | 19年 | 20年 1~11月 | 20年12月 (予測・約) | 20年暦年 (予測・約) | 前年比 (予測・約) | 21年 (予測・約) | 前年比 (21年 /20年) | |
東京都区部 | 28,340 | 20,774 | 18,472 | 14,764 | 16,017 | 15,957 | 13,737 | 8,677 | 2,000 | 10,700 | -22.1% | 14000 | 30.8% |
都 下 | 4,436 | 4,425 | 5,427 | 4,069 | 4,016 | 3,666 | 2,537 | 2,065 | 300 | 2,400 | -5.4% | 3000 | 25.0% |
神奈川県 | 11,805 | 10,121 | 7,964 | 8,774 | 8,540 | 8,212 | 7,183 | 4,234 | 1,000 | 5,200 | -27.6% | 7000 | 34.6% |
埼玉県 | 6,617 | 4,473 | 4,415 | 3,897 | 3,956 | 4,294 | 4,581 | 2,241 | 500 | 2,700 | -41.1% | 4000 | 48.1% |
千葉県 | 5,280 | 5,120 | 4,171 | 4,268 | 3,369 | 5,003 | 3,200 | 2,657 | 700 | 3,400 | 6.3% | 4000 | 17.6% |
合計 | 56,478 | 44,913 | 40,449 | 35,772 | 35,898 | 37,132 | 31,238 | 19,874 | 4,500 | 24,400 | -21.9% | 32,000 | 31.1% |
前年比 増加率 | 23.8% | ▲20.5% | ▲9.9% | ▲11.6% | 0.4% | 3.4% | ▲15.9% | ― | ― | ― | -21.9% | 31.1% |
価格の動き(カッコ内は㎡単価)
13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 17年 | 18年 | 19年 | 20年 1~11月 | 対前年比 (20年1~11月 /19年) | |
東京都区部 | 5,853(86.5) | 5,994(87.3) | 6,732(98.7) | 6,629(100.5) | 7,089(108.3) | 7,142(113.8) | 7,286(112.3) | 7,775(127.8) | 6.7%(13.8%) |
都 下 | 4,238(58.0) | 4,726(64.8) | 4,564(62.1) | 4,985(69.3) | 5,054(71.2) | 5,235(74.5) | 5,487(79.3) | 5,425(80.0) | ▲1.1%(0.9%) |
神奈川県 | 4,212(57.4) | 4,384(61.0) | 4,953(69.0) | 5,040(71.2) | 5,524(77.1) | 5,457(76.9) | 5,295(75.8) | 5,498(82.3) | 3.8%(8.6%) |
埼玉県 | 3,718(51.2) | 3,930(54.4) | 4,146(57.8) | 4,255(59.9) | 4,365(61.1) | 4,305(61.9) | 4,513(64.0) | 4,567(66.5) | 1.2%(3.9%) |
千葉県 | 3,675(47.5) | 3,879(50.0) | 3,910(51.4) | 4,085(56.0) | 4,099(57.0) | 4,306(58.5) | 4,399(60.5) | 4,555(63.4) | 3.5%(4.8%) |
首都圏 | 4,929(69.7) | 5,060(71.1) | 5,518(77.9) | 5,490(79.3) | 5,908(85.9) | 5,871(86.9) | 5,980(87.9) | 6,254(95.9) | 4.6%(9.1%) |
近畿圏マンション市場予測―2021年の供給予測―
マンション供給は1万8,000戸。2020年に比べ29.5%の増加に。
◆2020年は前年比23.0%減の1万3,900戸の見込み。
コロナ禍の影響により、当初予測の1万7,000戸より大幅に下振れ。
◆2021年は前年比29.5%増の1万8,000戸。コロナ前の2019年水準まで回復すると予想。
◆大阪市部6,200戸、大阪府下4,000戸、神戸市部1,700戸、兵庫県下3,000戸、京都市部1,200戸。
◆奈良県を除く全エリアで大幅増加の見込み。
大阪市は1割増、兵庫県下と京都府下が大幅供給増。
◆大阪市部の超高層物件は、近年コンスタントな供給があり、2021年も継続の見通し。
◆近年増加傾向の1K等投資物件は、2020年の大幅減からは復調も年前半は弱含みか。
◆減少傾向が続いていた京都市部は、市内外周部で中規模物件が活発化。京都府下は大幅増。
◆神戸市部ではタワー、兵庫県下では物件の中・大規模化により、供給増が見込まれる。
在庫はやや積み上がりが懸念される。着工は20年1~10月で前年同期比1.9%増。
◆在庫は11月末で3,229戸。前年同月末比で48.5%増加しており、やや積み上がりが懸念される。
◆一方、完成在庫は前年同月末比13.0%増の1,241戸と低水準にとどまっている。
◆着工は2020年1~10月が前年同期比1.9%増の2万1,460戸。
◆2020年1~11月の㎡単価69.8万円(坪単価230.7万円)、8年連続の上昇。
単価の上昇は継続。郊外ファミリーエリアが活発化。
◆都心部の価格高騰のあおりで供給は短期的に外周部へ。在宅勤務等で広面積住戸への需要が旺盛に。
◆中心部はホテルとの競合が薄れ、マンション用地仕入れが再び活発化。
◆2020年1~11月のマンション供給社数は71社に減少(2019年1~11月は80社)。