三井不、外苑再開発の発信と対話を強化―正しい情報で共感の輪、夏に住民説明会

(提供:日刊不動産経済通信)東京・神宮外苑地区の再開発事業に代表施工者として参画する三井不動産が市民らへの情報発信を強めている。年月を経て古びたスポーツ施設や樹木の更新と、ビル整備による民有地の有効利用を両立させる事業だが、SNS上など一部に反対の声が根強いためだ。4月に専用サイトを刷新し、事業の意義や工事の手順、植樹方針などの説明を拡充。今夏に住民説明会も準備している。外苑を象徴する4列のいちょう並木は事業者の手で慎重に保全され、植栽や公開空地なども施工後に増えるが、事実誤認や感情論などの反対意見が目立つ。三井不動産は「正しい情報を届けて事業に共感してくれる人を増やしたい」と強調する。

 事業では老朽化したスポーツ施設群を段階的に更新するとともに、市民からも献木を募り樹林地や散策路などを増やす。国際基準に沿うドーム型ラグビー場やホテル併設の野球場、事務所ビル、文化施設などを建て、それらの収益で明治神宮本体と広大な緑を保つ。外苑と内苑の運営費を確保するために、現施設を稼働させつつ別の場所に建て替える作業が必須だ。事業の見直しを説く日本イコモス国内委員会が昨年示したような現地改築案では維持費が途絶える。公費に依存しない更新計画を評価する有識者の声がある。

 総面積28ha超のうち環境アセスの対象は約17ha。都心一等地の大型事業だけに注目され、賛否の意見がある。伐採を疑問視する声が多いが、再開発で樹木の数は1904本から1998本に増え、緑の割合も現行の約25%から30%に高まる。工程上、約740本の木を切るがそれ以上の数を植える。4列のいちょう並木は「保護の最重要項目として配慮」(三井不動産広報部)し、並木から約8mと近い施工現場では木の根に干渉しないよう必要に応じ地下躯体を設けたり迂回したりする。そうした工事の経過は逐一報告される。

 環境影響評価など必要な行政手続きは済んでいる。2月に都の施行認可が下り、3月に既存解体に着手した。次のプロセスは本体工事を始める前段の権利変換計画認可だ。東京都都市整備局土地利用計画課の小川直記・まちづくり推進担当課長は「神宮外苑を公園と誤解する人が多いが民地であり、伐採も倒木事故などを防ぐ上で必須の作業だ」と指摘し、「誤った見解が拡散するのは不本意だが、情報のやり取りを増やしていくしかない」と地道な広報の重要性を説く。三井不動産は「東京ミッドタウン」など複数の開発地で都市運営を手掛ける。その知見を神宮外苑にも生かす方針で、今秋以降に外苑でも地域イベントを考えている。再開発の全体完成は2036年と息が長い事業だ。他の事業者の明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事らと共同で粘り強く発信と対話を続ける。

三井不、現場の仮囲いを情報発信に活用
 三井不動産は「神宮外苑地区まちづくりに関わる情報発信について」と題する武井雅昭・港区長宛ての文書を20日に外苑再開発の特設サイトで公表した。同区から、区民の質問に答える場を設けたり、情報発信拠点を事業地区に作ったりするなどの要請を受けたことに応えた。情報発信拠点の設置については安全管理上の理由で見送るとしたが、事業のサイトや現地のスポーツ施設などに神宮外苑まちづくり準備室の連絡先を記載し、来訪者らの問い合わせに応じる考えを示した。現場の仮囲いなどを情報発信の場として活用する案も提示した。サイトでは写真と図版、動画を使い、外苑の歴史や事業の概要、工事の進め方などを解説。「Q&A」欄で高層ビルを建てる理由や再開発事業の手続き、工事の完成イメージなどを説明している。

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