≪特集 インド不動産市場のポテンシャル③≫◎バンガロールで開発初弾、他都市も視野―中間層拡大が追い風、米中関係で変化も 三井不動産アジア・エグゼクティブディレクター津國 雄之氏

 

(提供:日刊不動産経済通信

―インドの足元の経済情勢をどうみる。

 津國氏 世界のトレンドから大きく外れてはいない。失業率は7~8%で従来に比べ大きく悪化してはおらず、巡航速度で走っているという印象だ。一方、政策金利は昨年5月頃まで4%前後の低位が続いていたが、この1年で6・5%程度まで上がった。ただインフレ率はこのところ落ち着いてきて、インド準備銀行(中央銀行)も4月の金利を6・5%に据え置いた。

 ―インド経済のこれからをどう展望する。

 津國氏 短期的にも長期的にも心配していない。インド経済は内需に依存する側面が大きいが、(消費が旺盛な)中間層が順調に拡大している。雇用情勢も特に悪化してはおらず、家計への悪影響も生じていない。米中関係の雲行きが怪しくなり、企業が生産拠点を中国からインドに移す動きもある。米中関係がインド市場のゲーム・チェンジャーになる公算が大きい。

三井不動産アジア 津國雄之氏

 ―三井不動産がインドに進出した背景は。

 津國氏 7、8年前から進出を検討していた。安定収益と成長を狙うという二つの観点で海外事業を考えた時、後者の可能性が大きいとされたのがインドだった。当初は有力な不動産会社を知る関係者やJLLなどのエージェント経由で人脈を広げ、その過程でバンガロールを拠点とするRMZ社を知った。開発とテナントサービスの質が高い点が提携の決め手になった。

 ―第1号案件をバンガロールで手掛けている。

 津國氏 RMZ社とのJVでIT企業向けのオフィスを開発している。今は2期のうち1期工事だ。4棟構成の12階建てビルで総貸付面積は約33万㎡に上る。

 ―ビルのリーシングの状況は。

 津國氏 コロナ禍で滞っていたが徐々に勢いがつき、だいぶ埋まってきた。1棟目はテナントへの引き渡しを始めている。ITのほか金融機関や製薬関連など多様な業種の引き合いがあり年内には埋まりそうだ。

 ―バンガロールのオフィス需要について。

 津國氏 米国を中心とする海外企業が支えている。既存企業の雇用拡大などに伴う増床も増えていて、今後の伸びも期待できる。コロナ禍でインドでも在宅勤務が普及し、出社比率が1割を切る期間も長かったが、他国と同様、この数カ月でオフィス回帰が進んだ。

 ―開発の苦労は。インド特有の問題がありそうだ。

 津國氏 インドは連邦制の米国に似て都市ごとに許認可の制度や手続きが違う。そのためバンガロールでの経験が他都市での事業に生かせるかは分からない。先進国のように登記制度の保全度合いが高くなく、それを補うためにデューデリジェンスを徹底しないといけない。許認可の手続きにはRMZ社の知見が生きるが、用地仕入れの際は自前での綿密な調査が必須だ。

 ―インドで不動産事業を手掛けるリスク、課題は。

 津國氏 法制度や手続きに沿っていてもなぜか物事が進まないことが多い。水面下で複雑な交渉が必要で結果が出るまでの時間を予測しにくい。当社は東南アジアでは13年頃からタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどの国々で不動産事業を展開してきた。その経験がなければ今よりも苦戦していたはずだ。

 ―バンガロール以外の都市に進出する計画は。

 津國氏 別の都市やオフィス以外のアセットにも挑戦したい。インドの市場の厚みを考えれば住宅などにも商機がある。ムンバイやデリー、チェンナイなどの大都市は有望だ。まだ検討段階だがいずれ現地に支店を出したい。

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