(提供 日刊不動産経済通信)東急不動産は風力発電事業を拡大する。陸上大型風力発電所を稼働させている北海道松前町では、既存風車の発電能力を上回る規模の新設に向け、必要な調査に着手。さらに国の公募事業になるが、松前沖は洋上風力発電の候補地の一つにもなっており、同社は将来の参画も見据え、同町や地元の漁業協同組合と、洋上風力と漁業の協調に向けた協定をこのほど結んだ。
松前町は風力発電の適地で、同社が現在稼働させている大型風車は12基。ブレード(羽根部分)を含めた全高は148mと、19年4月の開業当時は国内最大級の規模だった。電力供給量を安定させる蓄電池も備える。定格容量は40・8MW(連系出力36MW)、総事業費は200億円程度。さらに12基・約50MWの増設を検討しており、今年2月から環境影響評価(アセス)の調査を始めている。ただ、一連の手続きには時間を要するため、着工までには数年かかる模様。
地域との共生にも力を入れているのも特徴。18年の胆振東部地震の影響で北海道全域で長時間の停電(ブラックアウト)が発生したことを踏まえ、災害時には風力発電所の電力を同町に送る「地域マイクログリッド」を本年度中に構築する計画。さらに、洋上風力発電には漁業権の整理や漁業振興策など地元漁業の理解が不可欠だが、「漁業協同組合では殆ど了解を得ている」(石川英雄町長)という。同町は、地域の電力供給が安定すれば、将来的にはデータセンターや水素工場の誘致などにも期待する。風力発電は長期的事業にはなるが、東急不動産はリゾート開発や土地区画整理事業のノウハウや企業文化を生かし、地域と深く関わりながら腰を据えて事業に取り組んでいく考えだ。