免震マンション反響、超高層でも売れる
―GWで回復、2大アウトレットも再開へ
震災から3カ月を迎える東北の中心地、仙台の不動産マーケットは、当初沸き起こった賃貸需要から、徐々に状況が落ち着いてきた。マンションや戸建てなど、不動産売買に広がりをみせており、マーケットは回復傾向をたどっている。
分譲マンション販売は首都圏同様、4月下旬からのゴールデンウィーク(GW)に照準を合わせ、本格再開し、モデルルームにも客足が戻った。野村不動産は、中心部近郊の住宅地などで中層規模マンションを展開。このほど、「プラウド長町ガーデンズ」(太白区、総戸数40戸)が即日完売した。「震災直後は、石巻や若林区からの来場者がすぐに入居できる物件を探す傾向があったが、現在は、ほぼ通常の状況に戻りつつある。来場者は前年比1割減だが、来場者の購入意欲は高く、歩留りは高い」(同社)としている。
東北本拠のマンションデベロッパー、サンシティは、仙台市青葉区内で販売中の「サンデュエル中山クレシェール」(総戸数112戸)の契約が3~4月は途絶えていたが、5月には10件弱となり、残戸数は7戸となった。「この勢いであれば、今月中に完売できそう」(安瀬裕一事業部副部長)とみる。5月の購入者は、約半数が被災者関係だった。
大京は、昨年から販売している市内中心の免震・超高層「ザ・ライオンズ定禅寺タワー」(青葉区、192戸)のマンションギャラリーをGWから再開、免震マンションという安心感と、中心立地で販売価格1400万円台からという割安感などが受け入れられ、売れ行きは順調に推移している。「集客は、震災前と比べ減っていない。免震マンションのニーズは高い」(同社)と手応えをつかんでいる。
森トラストも、東北一の超高層ビル、仙台トラストタワーに隣接する住宅棟「ザ・レジデンス一番町」(青葉区、119戸)を順次、分譲販売している。かねてから震災に備えて免震マンションとし、耐震性能は、一般の超高層建築に求められる性能の1・5倍と国内最高レベルを誇る。同社の遠藤信幸仙台支店長は、「上層階であっても売れている。免震構造で揺れを吸収し、非常時のエレベーター対応なども体制を整えている。全体的な安全性が評価されていると思う」と話す。免震マンションは、ナイスも中層階規模を仙台で展開しており、顧客の反応は良い。
一方、超高層マンションは、大手デベロッパーを中心に、仙台中心部で販売中物件が5件程度散見される。建物規模は、地上20~30階・総戸数100~200戸程度と、東京と比べれば限定的。だが、アパグループは、完成在庫で免震×超高層など計3棟の「アップルタワーズ仙台」(青葉区、総戸数452戸)を復興支援価格として、最大500万円引きとする値引き販売を続けている。
商業施設セクターは、津波で浸水被害を受けた仙台港エリアで既に、量販店のケーズデンキやDIYのカインズホームが営業を再開しているが、最も駅寄り街区の「三井アウトレットパーク仙台港」(宮城野区)が修復作業の最終段階。三井不動産は25日に再開オープンする。三菱地所グループは、内陸部の泉パークタウン内で既に商業施設、タピオを稼働しているが、続いて近接する「仙台プレミアム・アウトレット」(泉区)を17日から再開オープン。これにより、仙台の2大アウトレットモールが再稼働する。
(2011/06/10 日刊不動産経済通信)
津波周辺地で宅地購入、現金持ちや業者
―仙台の中古マンション買い急ぎは落着き
仙台の不動産売買マーケット動向は、買い急ぎ傾向がみられた中古マンションが落ち着きをみせた。宅地販売は、例年並みの水準だが、市外沿岸の津波・冠水地周辺では、売り物が限定的な地域で売れ足が早い。即金でないと購入しづらい現実もあり、キャッシュ持ちや、建築業者が購入している。
仙台市内の中古マンション売買は震災翌月の4月、3LDKタイプ、1000万円前後~2000万円の動きが活発化した。売り物が多くない中、売買価格は前年比で1割程度アップ。購入者は、即入居を望む被災者が中心。だが、ゴールデンウィーク以降、5月は、被災者らの買い急ぎが減少し、マーケットは落ち着きをみせ始めた。
一方、宅地販売は、大手デベロッパーが展開する仙台市泉区内の複合開発地で、沿岸部から移転購入がみられたほか、住宅メーカーからの引き合いが多くなっている。だが、成約ベースは、例年並み。不動産仲介の大京リアルドも、「宅地購入者は、資金的にゆとりのある層。建築費は上昇傾向にあり、成約が活発化しているとはいえない」としている。
動きが顕著なのは、仙台市外の沿岸部で津波が押し寄せた地域。特に、地盤沈下などで冠水を続けているエリアでは、その周辺地で売り出しが限られていると売れ足は早い。鹿島建設が松島海岸近くの高台を造成した「シーアイタウン利府・葉山ガーデンズポート」(宮城県利府町、全455区画)は、約5年をかけ、販売最終段階だったが、震災で残り20区画がすぐに完売した。購入者は、約半分がキャッシュ持ちやすぐに金融機関から資金を融通できる個人、残りは、住宅メーカーによる先行取得だった。販売担当の鹿島東北興産は、「いまだに問い合わせが来る」と話す。
冠水被害が引き続く石巻市では、高台など、市内の浸水していないエリアの宅地50区画2件がともに売れた。このうちの1件を販売する不動産会社は、宅地の震災被害を修復しつつ、順次販売してきたが、「キャッシュでないと、買いにくいのが実情。ローンの承認にはどうしても時間がかかる。一方でローン残債があったり、資金の当てもないのに申し込みする人もおり、契約に至らず、出入りは激しい。周辺地では、値の釣り上げや売り止めも見受けられる」と話す。残りの50区画を今後3カ月で販売完了する見通しである。
全国展開のパワービルダー、アーネストワンは、東松島市で建売住宅と宅地計7区画を販売、浸水被害で修復を要したものの、建売りで2000万円を切る水準でもあり、売れ足は早かった。だが、津波被害地でも名取市は、大型団地の売り物が多い。それだけに、早期完売はみられないが、成約数は増加。ある不動産会社は、集客が前年比で3~4倍という。
また、賃貸マーケットは、賃貸住宅が「入居率が高く、仲介がなくなった。開店休業の状態」(宅建業者)。オフィスビル動向は、「建物の安全ニーズのほか、復興関連で床需要があり、一部増床ニーズに対応している」(三菱地所東北支店)。「BCPの観点から、安全・安心の視点で中心立地に最新の設備を備え、危機管理対応に優れたビルなどに対し、需要が高まっている」(三井不動産)としている。
(2011/06/14 日刊不動産経済通信)