投資対象として価値は高まり続ける―需要が急増するデータセンター(下)

投資対象として価値は高まり続ける―需要が急増するデータセンター(上)より続く

既存DCのバリューアッドには限界も
専業オペレーターの確保が投資拡大に


 新規DCが活発に開発される一方で、既存DCには問題点も見受けられる。1つ目は、既存DCの流動化市場が依然として小規模であることだ。国内のDC事業者である通信キャリアや、富士通、野村総合研究所などのシステムインテグレーターは、自社の土地でDCを開設し保有してきた。しかし、現在各社の積極的な新設が続く中、今後はCREの推進などからオフバランスニーズが増え、流動化市場が活性化する可能性がある。2つ目は、1990年代頃に建設され設備更新の時期を迎えたDCの活用方法だ。近年、需要が拡大しているDCは、電力容量や床荷重、セキュリティ、空調設備などにおいて高スペックの施設だ。クラウド系はもちろん、底堅い需要を持つ非クラウド系であっても同様である。C&Wアセットマネジメントの小木康資営業部門統括取締役兼エグゼクティブ・ディレクターは、「オフバラ化されたDCを投資家がバリューアッドさせる案件は少なくないが、実際はテナントを付けるのに非常に苦戦している」と指摘する。老朽化したDCのバリューアッドは、敷地と躯体の両面で限界がある。一方で、バブル経済期に建てられた物件の中には、ゆとりのある敷地や堅牢な躯体を保有し、価値を維持できるDCもある。投資案件には慎重な見極めが必要だ。
 旺盛な需要を背景に、今後も息の長い成長が見込めるDCアセット。その市場としての課題について、三井住友トラスト基礎研究所菅田修新規事業開発部部長は、「データセンター個別性が強く、ベンチマークがないことがハードルになっている。また国内には専業のオペレーターが少なく、投資をしたくても実行できない要因となっている」と指摘する。エンドユーザーのニーズに対応するためには、施設や設備のハード面を整えると同時に、オペレーターとなり得る人材確保などのソフト面の強化も必要だ。実際に、外資系企業を中心に大規模な開発を進める事業者は、専業オペレーターを傘下に確保し運用までを一体的に担うケースも多い。「オペレーター企業を傘下に確保し一体的にDCを運用することで収益機会は多用化する。そういう目線を持つプレーヤーが増えれば投資機会は増えていく」(菅田新規事業開発部部長)。
 今後、日本政府がDXを押し進め、自治体クラウドの利用など地方にもDCの需要が波及、投資機会が創出される可能性がある。DCアセットは、ますますインフラアセットとしての要素を強める方向なだけに、新たな投資機会が生み出されるという好循環につながれば、さらに市場の成長が期待される。

2020/11/25 不動産経済ファンドレビュー 

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