投資対象として価値は高まり続ける―需要が急増するデータセンター(上)

 コロナ禍によるネットワーク需要の増大を背景に、データセンター投資への注目が高まっている。特に、外資系事業者の積極的な参入が目立ち、ハイパースケールデータセンターといわれる高スペックな施設が続々と建設される。国内事業者やデベロッパーも新設を加速させ、データセンター市場は活況だ。拡大を続けるデータセンター市場の足元と、投資アセットとしての課題を探った。


開発型ファンドで大規模なDCの新設
DC集積エリアに外資系企業の参入が相次ぐ


 「需要の急増に対して供給のスピードが追い付かず、メガクラウド事業者は自社でデータセンター施設を作り保有するといった流れも出ている」(クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)鈴木英晃日本法人リサーチ部門ディレクター)。コロナ禍以前から供給不足感があったデータセンター(以下、DC)。IT専門の調査会社IDC Japanによると、2020年の国内DC市場は前年比2.9%増の1兆4518億円となる見込み。今後も高い成長率を維持し、2024年には2兆1828億円になると予測している。こうした中、多くのDCが集積する千葉県・印西や大阪府・彩都では、外資系事業者によるハイパースケールデータセンター(以下、HSDC)が建設ラッシュだ。
 HSDCは、およそ「5000サーバー以上を格納している1000㎡以上の施設」という巨大なもの。そのためDCの開発には、特別高圧の受電、光ファイバーの敷設といった特有の設備が必要なうえ、データ遅延を防ぐために人口の密集する都市圏から50㎞圏内に立地することが望ましい。ただ、自然災害リスクの回避からもDCの適地は限られ、近年では物流施設と開発用地が競合する。用地取得価格は高騰し、各開発事業者は、開発型ファンドを組成して新設を進めている。
 なかでも外資系事業者の動きが活発だ。アメリカでDC特化型リートとして上場するエクイニクスは、日本でHSDCを事業展開するため、今年4月にシンガポールのファンドであるGICと10億USドル超規模の合弁会社を設立。東京に2カ所、大阪に1カ所のHSDCを開発および運用する。今年中に開設される東京の1カ所は、千葉県・印西に8月末に竣工した地上5階建て、延床面積約1万7000㎡(5142.5坪)のHSDCとみられる。また、デジタル・リアルティ(米・DC特化型リート)が三菱商事と設立した合弁会社MCデジタル・リアルティは、現在400億円で東京、大阪のDCを運用。2022年までに2000億円規模までファンドを拡大するとし、千葉県・印西で4棟のHSDCを建設する計画だ。

大和ハウス工業HPより
「Air Trunk TOK1(エア トランク トウキョウ ワン)データセンター」全体イメージ

 印西エリアでは、豪エアトランクが大和ハウス工業と共同出資する特別目的会社を設立し、日本最大のHSDCを開発することを発表。2021年後半には、第1段階の稼働を開始する予定だ。さらに、グーグルは自社でDC建設を予定するが、その用地として2019年に印西エリアを取得済み。現在拡張工事が行われている敷地内に建設される可能性もある。こうした旺盛な需要に応えるため、東京電力も電力施設の増強に動く。最大1000MWの供給が可能な超高圧変電所を設け、2024年の秋には共用が開始される見通しだ。
 HSDCが印西エリアにこれほど集積する理由は、空港や都心からの利便性の良さに加え、北総台地という地盤の強さが災害リスク回避に適していることが大きい。現在では、電力の増強を見通せるなどインフラが整い、DCの新設がさらに新たなDCを呼ぶといった状況になりつつある。
 一方で、国内のプレーヤーも開発を加速している。国内通信事業であるNTTコミュニケーションズは、9月18日に首都圏で最大規模のHSDCを東京・武蔵野市に開設した。KDDIも、7月1日に東京・多摩市でHSDCを新設しており、今後敷地内での拡張が可能な用地も確保済み。両社は自社で保有するネットワークを活かし、大容量かつ高速な回線を提供することで今後も多用途の需要を取り込んでいく姿勢だ。
 国内デベロッパーとしては、三井不動産が2019年に印西エリアで地上4階建て、延床面積約3万152㎡(9120.98坪)のHSDCを着工。さらに、2021年2月の完成を目指して東京・多摩市で「多摩テクノロジービルディング(仮称)」を建設中だ。DC新設は郊外の大型HSDCばかりではない。都心にDCを新設するのは、三菱地所と丸紅が出資する丸の内ダイレクトアクセス。2021年7月に「大手町第2データセンター」を開設する予定。同センターは、大手町地区常盤橋再開発エリアに立地する。同社は、「オフィスや主要駅から徒歩で駆け付けることのできるデータセンターに対する評価はますます高まっている」と見ており、自社の光ファイバー網が大丸有エリアの多くのビルと直結している強みを生かし展開する考えだ。

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2020/11/25 不動産経済ファンドレビュー

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