【マンション管理の未来】 適正評価制度の社会的定着に注力マンション管理業協会 理事長 高松 茂 氏 (上)
マンション管理業協会 高松理事長


  超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化に加え、管理員の高齢化という「三つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、マンション管理業協会の新理事長に就任した高松茂氏に、今後の運営方針を聞いた。


制度は順調なスタート
インセンティブの付与へ交渉具体化


――就任の抱負を。
高松氏 私が理事長に就任して大きく変えるつもりはない。管理業界は取り組みをひとつひとつ積み上げて成果を上げていくところがあるので、これまでの取り組みを継続していきたい。岡本潮・前理事長が2018年に中期事業計画を策定した際、基本目標として「マンション管理業の成長発展・社会的評価の向上」と「業界従業者の処遇の改善・社会的評価の確立」を2つのミッションとして掲げた。今期はその最終年度だが、まだ目標に達している状況ではない。引き続きこの2つのミッションを目標にして活動したい。
 2つの目標を実現するために具体的に取り組むことと言えば、マンション管理適正評価制度と、国が創設した管理計画認定制度の2つを社会に定着させることになる。6月半ばの段階で適正評価制度の登録数は12件だが、自分としては順調なスタートを切れていると思っている。4月から6月にかけて管理組合の総会が集中する時期で、総会で適正評価制度の登録を承認した管理組合が相当数あると見込んでいる。ただ、登録までには総会の議事録の承認手続きなどがあり、さらに1カ月半程度の時間も必要だ。登録の増加が見えてくるのは秋口以降になるとみている。
また、協会の地方支部や地方自治体と意見交換する中では、各支部も真剣に受け止めた活動を行っており、また自治体は管理計画認定制度の実施主体として前向きに取り組む姿勢をみせているように感じる。個人的な感覚でいえば、こうした状況であれば制度の社会的な定着は可能だと感じている。

――適正評価制度の登録状況など、現状をどう受け止めているか。また制度の普及に向けた取り組みは。
高松氏 協会や会員会社として一番の強みは、顧客とマンツーマンで接していることにある。フロントが直接管理組合と接して直接会話し、制度の内容について理解してもらえる。適正評価制度だけでなく管理計画認定制度についても会員各社を通じて情報を届けており、両制度の普及を下支えしたい。
会員各社には協会として研修の実施やマニュアルの作成などでサポートしていく。また適正評価制度のインセンティブを確保していくことも会員会社が制度を提案する上でのバックアップになる。損害保険会社とは管理組合向け災害保険の引き受けや保険料に関してインセンティブが付与できないか議論を続けているが、各社の仕組みの中で評価制度の評価基準を組み込む動きもあるなど、前向きな方向に進んでいる。ひとつひとつ成果を積み上げ、管理会社のフロントが管理組合に提案しやすい武器を与えられるようにしていきたい。また適正評価制度に登録したマンションの情報開示も重要だ。東急リバブルの不動産情報サイトでは、登録した物件はその評価を掲載することが決まった。複数の不動産ポータルサイトと、掲載に向けた調整を行っており、詰めの状況に来ている。

評価制度は資産価値と居住価値の両方を高める
管理の見える化は管理会社の価値への理解に


――適正評価制度により、管理業界の地位向上をどう進めるか。
高松氏 管理会社の大事な役割として、管理組合がどう運営していくかをともに考えサポートしてきたところがあるが、なかなか所有者に理解されにくいところがあった。適正評価制度によって管理の状況が見える化されてくると、現状より管理の質をさらに向上させるために必要なことが明確になり、向上をサポートするところで管理会社の役割や意義も出てくる。
 適正評価制度の出発点は、業界の地位向上のためにも管理状況の質的向上が不動産流通市場で評価され取引価格に反映してもらおうとしてきた。資産価値の向上に目を向けて制度を提案してきたきらいがあったが、提案してみると、永住志向があるから売買は考えていないという区分所有者の声もいただく。確かに、マンションの価値は資産価値だけでなく、居住価値というもうひとつの柱もある。適正評価制度は資産価値に対してのみ効果のある制度ではなく、10年後、20年度もマンションの良好な環境を維持・向上していく上で必要なことが見える化させる制度でもある。永住志向の方にも制度を理解してもらい、管理組合と管理会社がコミュニケーションを取っていけるようにしていきたい。

【マンション管理の未来】 適正評価制度の社会的定着に注力マンション管理業協会 理事長 高松 茂 氏 (下)へ続く

2022/8/5 月刊マンションタイムズ

マンションタイムズ
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