首都圏で2000年頃から本格的に供給が始まったコンパクトマンションが、築15年~20年を迎え、中古市場に登場している。利便性を重視しながら価格が抑えられた商品として市場に定着したが、新築分譲マンション市場の価格高騰により、コンパクトマンションが置かれた事情も変わりつつある。足元の新築と中古市場の動向を見る。
2015年以降平均価格は4000万円台で推移
中古流通増えず超都心部で平均単価差20%
コンパクトマンションは、ワンルームマンション(1R)とファミリーマンションの隙間を埋める新たな分譲マンションのカテゴリーとして2000年前後から登場した。1Rは居住性で劣るため、学生や若年単身向けで賃貸用が中心。それに対して、コンパクトは家賃負担と同程度の返済負担の価格で購入可能で、実需として満足して使える広さと設備・使用を備えており、将来的には賃貸も可能という点で単身女性を中心に人気が出た。また、夫婦2人の共稼ぎ世帯においても、部屋数よりも都心等の利便性が良好な立地を無理せずに買えることを重視する層に対して2LDK商品が評価された。供給側から見てもメリットが大きく、コンパクトにすることにより高単価が狙え、小家族層に人気があるエリア・立地条件であれば採算性の高い事業となる。
市場推移を見ると、(以下、新築はトータルブレイン調べ、中古はレインズ成約データ)2001年以降の平均販売戸数は2640戸で、2000年台前半のコンパクトマンション供給ブームの2003年に6112戸、2004年に4547戸が供給された。平均単価・価格を見ると、平均単価は、アベノミクス直前の2012年までは坪単価200万円台で安定推移、2013年から300万円台となり、2016年以降は300万円台後半で推移している。平均価格も2012年までは3000万円台で推移していたが、2013年以降は4000万円前後、2015年から4000万円台で推移している。上昇幅は小さく、かつ、5000万円台への上昇は見られないことから、グロスの上限があり、供給エリアが徐々に都心部から外側に変化。コンパクトマンション市場は商品性そのものの変化が少なく、供給エリアの変化でマーケットに対応している。
2019年以降は、超都心・都心・城南エリアの供給が急激に減少。代わって、23区内では城東・城北の供給割合が増加。神奈川は利便性・人気の高い横浜・川崎エリアでコンスタントに供給され、都下の秋津、久米川、豊田や埼玉も京浜東北線沿線を中心に三郷中央や越谷、千葉の郊外部でも供給が始まっている。
一定のポジションを得たコンパクトマンションだが、中古市場で中心となっている築10~19年の物件は、年間成約件数が約1800戸で安定している。ただ、成約単価は、アベノミクス前後の坪150万~160万円台から、2022年は324.9万円と106%上昇、成約価格も2000万円台後半から4000万円台後半へと大幅上昇している。特に新築コンパクトの供給が再び活発化した2016年頃から、中古も成約単価・価格の上昇が顕著になり、2021年以降はさらに上昇している。成約件数は増えず、良好な需給バランスの中で、大幅な価格上昇が見られている。新築コンパクトの供給エリアが都心から近郊部にドーナツ化していく中で、都心の中古コンパクトの希少価値がますます高まってきているということだ。
2021年における超都心3区(港、千代田、渋谷)での新築供給数は191戸に対し、中古成約数は199戸。平均単価は新築の548.7万円に対して中古が20%安い438.7万円で、一般的な新築と中古の価格差30%と比べて単価差は少ない。都心3区(中央、新宿、文京)でも価格差は25%と少なめだ。その傾向はさらに城南4区(目黒、品川、世田谷、大田)、城西3区(中野、杉並、練馬)にも滲み出している状況にある。
都心部で高まる希少価値 首都圏コンパクトMの新築と中古(下)へ続く
2022/6/15 不動産経済ファンドレビュー