首都圏で2000年頃から本格的に供給が始まったコンパクトマンションが、築15年~20年を迎え、中古市場に登場している。利便性を重視しながら価格が抑えられた商品として市場に定着したが、新築分譲マンション市場の価格高騰により、コンパクトマンションが置かれた事情も変わりつつある。足元の新築と中古市場の動向を見る。
都心部で高まる希少価値 首都圏コンパクトMの新築と中古(上)より続く
供給エリアのドーナツ化が急速に進む
郊外部はハイブリッド型の供給に活路
2022年も首都圏の分譲マンション市場は価格上昇を続けている。単身者向け1LDK商品は、ダブルインカム向けの2LDKとは異なり、ターゲットの予算の伸びが少ないうえ、専有面積が30㎡台と狭小なため、面積圧縮によるグロス調整も難しい。それゆえ、価格上昇が著しい都心では新規供給が難しく、大手デベは賃貸マンションや収益物件などの事業化を優先させ、単身向けコンパクト商品の供給エリアはドーナツ化が急速に進んでいる。ただ、新規供給が空洞化した都心部におけるニーズを中古市場がカバーできているわけではない。2000年台前半に大量供給されたコンパクトマンションは、現在中古の適齢期を迎えているが、主たるターゲットが実需単身層だったため、買替え等による売却件数が少なく、中古市場に売り物が出てくるケースが少ない。都心部で貸しやすいため、所有者は売却せずに賃貸化されるケースも多いと見られている。その結果、圧倒的な需給バランスの良さから都心の1LDKの希少性はより高まっている。
希少性の高さはリセールバリューに現れ、超都心部は50㎡前後の広めながら、「スタイルハウス南麻布」(港区)は、新築時の平均単価334.5万円に対して509.6万円と52%上昇、「ブランズ南麻布」(同)も47%上昇している。コンパクトマンションの走りで、2002年4月に竣工した「コンパートメント東京中央」(中央区)に至っては、新築時から73%上昇しており、エリア評価が見直され、コンパクトニーズも拡大していることが大きく価格を押し上げたようだ。
新築と中古の市場における共通点は、都心で価格が大幅に上昇していることだ。一方で相違点は、新築が郊外でも1LDKを中心に市場を拡大し、郊外のコンパクト市場が徐々に形成されつつあるのに対し、中古は1LDK自体の取引が少なく、特に郊外ではまだ市場が形成されていない。2LDKだが販売価格を抑える、いわばグロス圧縮商品の位置付けで取引されているに過ぎない。ただ、現状の人口・世帯構成の変化や働き方、ライフスタイル等の変化のスピードを加味すると、今後、近郊や郊外でも好利便立地では、グロス圧縮型のみならず、1LDK市場の拡大が見込まれる。
コンパクトタイプが分譲マンション市場の一角を担い、単身、2人世帯が認知され、かつては3LDKを中心に組み立てられていた間取りも絶対ではなくなっている。23区は単身、DINKS層が多いためコンパクト特化型の商品供給が可能だが、郊外では供給可能なエリアは限られる。そこで考えられるのが、ファミリーをターゲットにしながら1LDKから3LDKまでをバランスよく組み入れたハイブリッド型の供給だ。「同じような世帯構成にならず、商品の多様性も広がる」(杉原禎之トータルブレイン副社長)。近郊・郊外での新築1LDK市場の拡大によって、今後、郊外でも中古のコンパクト市場が形成されていけば、「コンパクト市場全体の評価アップにもつながり、ひいては新築のマーケットにも安定と成長を促すことになる」(杉原氏)。コンパクトマンションは好立地に加えてグロス価格を一定ラインに抑えるから売れる。これは絶対条件だ。土地の仕入れ価格、建築費が上昇する中、デベロッパーの本領が発揮される場面が来ていると言えそうだ。
2022/6/15 不動産経済ファンドレビュー