日本エスコンが私募リートの組成に乗り出した。2019年に上場し商業施設の底地などを運用する「エスコンジャパンリート投資法人」とは別に、上場リートが扱わない住宅を運用資産のメインとし、アセットマネジメント業務の収益を強化する。2021年度に資産規模100億円程度で運用を始め、毎年100億円ずつ外部成長を図る考え。私募リートのクライテリアは、賃貸マンションがメイン、その他ホテル、事務所等を想定しており、原則として上場リートが扱っていないアセットを運用することで、社内でのコンフリクトを避ける。2021年度中にリートの運用を開始し、日本エスコンが保有する不動産を中心に年100億円程度のペースで着実に成長を図る。運用はエスコンアセットマネジメント(EAM)。
このほど日本エスコンは、私募リートに組み入れる賃貸マンションを開発することを目的に、日神不動産と共同で組成した開発ファンドに匿名組合出資。竣工後は日本エスコンが一定期間運用後、日本エスコンまたは日本エスコンが指定する者が取得できるよう優先交渉権を付与した。出資したSPCが開発するのは「上北台駅前開発プロジェクト」(東京都東大和市上北台1-2)。多摩都市モノレール上北台駅から徒歩1分、敷地面積894.34㎡(270.53坪)、RC造地上9階建て、延床面積3042.56㎡(920.37坪)。資産規模は竣工時の想定鑑定評価額ベースで15億円。もう1つは、「藤沢開発プロジェクト」(神奈川県藤沢市川名1-1)。JR東海道線・小田急線藤沢駅から徒歩10分、江ノ島電鉄藤沢駅から徒歩9分、敷地面積1119.13㎡(338.53坪)、RC造地上5階建て、延床面積2064.52㎡(624.51坪)、資産規模は同12億1000万円。いずれも土地は日神不動産が取得し、開発・建築関連の許認可を取得した上で、SPCから譲渡される予定であり、日本エスコングループと日神グループホールディングスとの証券化事業連携の第1号ファンド組成案件。EAMがアレンジ業務を受託し、ファンドの組成・運営事業などを手掛けるリオナス㈱とEAMが協働でAM助言代理業務を受託する予定。
日本エスコンが昨年上場させたJリートは、暮らしに密着した商業施設、底地などを安定運用しているものの、Jリート市場は外部環境により投資口価格が大きく変動するなど安定的な投資がしずらい状況にある。一方、私募リートの投資口価格は、資産の鑑定評価額と連動し大きな価格の変動がない。さらに地銀、信金など金融機関に預金が集まる中、余剰資金運用の受け皿として、一定のニーズがある。コロナ禍でも賃貸マンション市場は堅調に推移し、エスコングループが得意とするマンション開発のノウハウを活かせることから、中長期的に安定的な運用が求められる私募リート市場への参入を判断した。
2020/10/05 不動産経済ファンドレビュー