区分所有法の見直しへ政府が方針 23年度にも具体の検討に着手(上)より続く
関係閣僚会議では、建替え決議の多数決要件の緩和のほか、所在不明区分所有者の決議の分母からの除外、所有者不明や管理不全状態にある区分所有建物に特化した財産管理制度の構築、全員同意がなくても区分所有関係の解消を可能にする仕組み、被災建物の大規模一部滅失時の1年以内となっている決議可能期間の延長などが打ち出された。建替え決議の要件緩和は、研究会で▽区分所有者及び議決権の、それぞれ「4分の3」や「3分の2」以上の賛成に引き下げ、▽地震への安全性や外壁剥落による周辺への悪影響などの要件により多数決要件を「4分の3」「3分の2」とする、▽全員合意により「4分の3」「3分の2」に変更、▽所有者不明区分所有者を建替え決議の母数から除外する―を想定。ただ、物件による状況の違いや、別の規定との多数決割合のバランスなども検討が必要で、慎重な検討が進められる見込みだ。
関係閣僚会議で示された検討のテーマ
建物の管理を円滑化する方策
▶不明区分所有者を決議の分母から除外
▶所有者不明や管理不全にある区分所有建物に特化した
財産管理を可能とする仕組み
建物の再生を円滑化する方策
▶建替え決議の多数決要件(5分の4)を緩和する仕組み
▶全員号がなくても区分所有関係の解消を可能とする仕組み
被災建物の再生を円滑化する方策
▶再建決議等の多数決要件を緩和する仕組み
▶大規模一部滅失時の決議可能期間(1年以内)を延長する仕組み
所有者不明の区分所有者のいる建物の財産管理制度について、研究会では(仮称)所有者不明専有部分管理制度と名付け、対象の専有部分について裁判所が利害関係人の請求により管理人による管理を命ずる処分を行うことが可能となる仕組みと想定。その上で、管理命令を発令する対象は専有部分とした。1棟の建物に複数の所有者不明の専有部分がある場合はそれらをまとめて1人の管理人による管理も考えられるとしている。
利害関係人とは、その建物のほかの区分所有者や、その建物が適切に管理されないことで不利益を被る近隣住民、購入計画に具体性があり建物の利用に利害がある購入希望者、一部の共有者が不明である場合のほかの共有者を例示している。管理組合や理事、全体が空家になっているなど特別な管理が必要な場合の自治体なども含まれる。
管理人は、専有部分の保存や利用・改良行為を行えるとし、裁判所の許可により処分や改良を超える変更工事も可能とした。不明の区分所有者の代わりに集会の決議に参加して共用部分の管理に関わることを想定している。
2022/7/5 月刊マンションタイムズ