過熱した市場から 効率化のステージへ ―全国に商機見出す物流施設市場(下)
不動産経済ファンドレビュー

 

都市型物流は多目的使用に活路
用地高騰も、試される開発事業者の手腕


 ネットワークの効率化と労働効率の両者を満たして軌道に乗るのは、プロロジスの都市型賃貸用物流施設「プロロジスアーバン」だ。物流事業者のラストワンマイル需要に応えるため 品川区と足立区に建設した施設は、全て満床で稼働している。 プロロジスによれば、リーシングの過程で 物流関係事業者が一部オフィスやコールセンターなど、倉庫以外の用途で使用する引き合いがあり、想定とは異なる需要が生まれている 。入居する企業 から見れば、品川区の平均的なオフィス賃料が 、2万5000円~3万円/坪という中で 、「アーバン」ならば約1万5000円に抑えられる。一方のプロロジスは、倉庫では6000円~7000円/坪といった相場のなか、坪単価を上げることで小ぶりな都市型物流施設であっても良好なキャッシュフローが確保出来る。供給側も入居企業 側も両者にとってウイン―ウインの関係が成立するが、課題は、「他用途と競合する土地の取得や行政上の規制 」( 山田社長 )。しかし、開発に手間がかかる分、確実な利益を得られる上に、新興のデベロッパーには難しい開発領域であるため、同業者間の競合が少ないメリットがある。今後もすでに数カ所での新設を予定している。
 都心の湾岸エリアや隅田川沿いなど河川交通の結節点であった場所は、集約効率と労働効率を兼ね備えた物流最適地で、現在は住宅地である場所にも従前は倉庫が多く立地していた。老朽化とともに建替えを検討した際、多くは1000坪内外の敷地で従来の倉庫業では収支が見合わず、交通利便性の良さも要因となりレジや商業施設へ建替えられていった。だが現在、都心へのラストワンマイル需要、および多用途利用など都心型物流施設需要が増加。エリアによってはスーパーよりも賃料が取れるといった現象も生じている。広大な土地に単に箱を作る開発ではなく、用途転換による開発、テナント入替えによる賃料向上、配送集約のアレンジなど工夫が出来る知見を持つ事業者には、市場拡大とともに好機が訪れている。
 土地の取得が難しいのは、都心型物流施設だけではない。物流施設は、コロナ禍で安定した運用が見込める投資先として注目されたことに加え 、本業が傷んだ鉄道会社等が自社で開発に乗り出すなど デベロッパーが増加したことで、開発用地は高騰している。大和ハウス工業のように、区画整理事業や農地転用等行政とのリレーションを活用して取得する例、三井不動産のようにIHIやSGリアルティらと共同事業を行い、再開発案件として用地を取得する例など、各社工夫を凝らして開発を進める。 今後需給の緩みから 若干競争が緩和されたとしても、首都圏を中心に物流適地は限られており、用地取得をめぐる各社の工夫は続いていく。
 一方、 地方圏でも新たな市場の模索が始まっている。 現在は、空室率0%を記録する福岡圏でも、数年前まで賃料は“3000円の壁”と言われてきた。久保田氏によれば、地方では要件の厳しい 営業倉庫としてではなく、不動産賃貸借契約等で建屋を使用するケースが多く、ゆえに簡易な建物が利用されることで賃料も安価に抑えられている。だが、老朽化による更新需要は地方にも存在し、各地の要衝には、賃料負担力のある大手物流企業が倉庫を利用している。また、慢性的なドライバー不足に悩む物流業界は、“2024年問題”にも向き合わねばならない。ドライバーの月間残業時間が80時間に制限されるもので、これが施行されると、各地の要衝は分散を迫られる。たとえば、仙台を東北地方全域の配送拠点とすることは不可能であり、これは各地方に同様のことが言えることから、 各要衝で的確にテナント需要を捉えれば、新たな 開発市場が見えてくる 。地域と テナント需要にマッチした機能を提供し、 ネットワーク内の集約と分散を最適化する。 コロナ禍で急速に注目が高まった物流施設市場において、開発事業者による 手腕がこれまで以上に試される。

2022/2/5 不動産経済ファンドレビュー

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