シリーズ;東京都の環境政策にどう対応するか EV充電器・太陽光パネル設置義務化へ③ 太陽光発電協会(上)より続く
余剰電力をどう活用するか
青い折れ線が消費電力だ。赤い折れ線が太陽光発電による電力。青い線より下の黄色く抜き出したところが自家消費分となる電力だ。この部分が電力会社から買わなくて良い電気代だ。自家消費のメリットが出るところだ。今は一般的な戸建て住宅の電気代の単価が26円/kwhぐらいだろうか。これに燃料調整費が足されて30円ぐらい。それを買わなくて済むということになる。ただし昼間は使う量が少なく、発電は一杯できるので余る。余剰電力が6、7割出てしまう。この余剰分は今年で言えば17円で電力会社に売れる。かたや自家消費の部分が27、8円とすると、売ったら17円だから自家消費で使った方が 経済的なメリットはあるということになる。
昔は売電の単価が一番高い時で48円とかだったのが今は17円。つまりはたくさん作って売らないと経済的なメリットないと考えられてしまうが、今は太陽光発電システムのコストが安くなり、電力会社から買うよりも安く電気を作ることが可能だ。売電が安くなって損だとか元が取れないとかいう人がいるが、それは昔の話だ。 今は発電コストが安くなっているので、電気は電力会社から買うより自分で作った方が安いとご理解いただけると思う。
それでも初期投資は安くはない。義務化対象となる住宅業者にとって負担では
住宅供給業者の考えている問題点は、例えば5000万円の価格の住宅に100万円の太陽光発電システムを載せると、5100万円と割高になり、売り上げが落ちるという点だ。そのコストアップ分を住宅購入者に転嫁するとなると、消費者の住宅購入時に初期費用が掛かる。一次取得者層にとっては住宅ローン融資額の中から太陽光の設置費用に充てることが難しいケースもあるだろう。
だが今は初期費用を必要としない「TPO」とか「PPA」といった第三者所有の仕組みがある。もし設置にあたり初期費用の捻出が難しいならば、これら初期投資を必要としてない第三者所有モデルを利用して設置することができる。第三者所有モデルは設置にあたり一定の期間が設定されている。例えば期間10年とすると、11年目以降は費用なく顧客へ設置済みの設備を無償提供する。エンドユーザーは長年にわたり安い電気が使えることになる。設置に関するリースとか保守点検、廃棄といった個別の課題に関しても、太陽光発電協会として都の政策を全面的にバックアップしていく方針だ。都には「住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進事業」の推進、拡大をお願いしている。
第三者所有モデルにおける住宅会社のメリットは
供給事業者へのメリットももちろんある。第三者所有のやり方は、例えば一次取得者が購入しやすいローコスト住宅メーカーに活用されやすいのではないか。そもそもこの仕組みは住宅事業者側でビジネスモデルを考えたものだ。家を建てる場合に住宅ローンを組んで 建てられることがほとんどだろうが、その時にローンの借り入れの上限額がありその上限の中から太陽光発電の費用を引かれると、家に掛けられる金額がその分減ってしまう。住宅会社はそこが嫌なんだろうと思う。そうであれば、第三者所有の形にして、住宅ローンの金額は100%家に使ってもらい、太陽光パネルの設置費用は掛からない。そうすることで、住宅会社は自分の商売に困らないのではないか。第三者所有は新しい事業モデルであるため、顕著な実績はまだない。ただし今後はローコスト住宅などで使っていただけるモデルだと思っている。
東京都の資料でも第三者所有モデルは明記されており、初期費用の負担が問題であれば第三者所有モデルのようなものを利用するといった内容が書かれてある。住宅事業者の負担が難しいならエンドに販売するでも良いだろうし、エンドの初期費用が掛からない第三者所有モデル、リースの形態にしてもいろんな形がある。それと忘れてはならないのは災害時のレジリエンスだ。例えば停電時に電力会社から電気供給がされなくても、昼間であれば太陽光発電で一定量の電気を使うことができる。
夜間に関しては蓄電?あるいは電力会社から買えばいいのか
太陽電池単体で発電した場合は当然蓄電することはできないので、夜は電力会社から買うことになる。もちろん太陽光発電と蓄電池をセットで設置するのなら、外に売らずに余った電力を溜めておいて夜に使えばいい。どういうシステムを設置するかで変わることだ。蓄電といっても難しいことはない。今後電気自動車が普及していく。経産省は、2050年カーボンニュートラルに向けて、新車販売におけるEVの比率を2030年までに20~30%とし、2040年までにEVと合成燃料等の脱炭素燃料の利用に適した車種で合計100%を目指すといった枠組みを決めている。EVは動く蓄電池だからそこに蓄電してもいい。先の東京都の「カーボンハーフ実現に向けた条例改正のあり方検討会」の中間まとめでも、太陽光発電とEVの組み合わせについて提案されている。新築住宅を建てるのと自動車の買い替えの時期は必ずしも一致しないが、これからは住宅とEVを同じタイミングで買い換える、そういう時代になるのではないか。
2030年の温室効果ガスの削減目標は66%削減だ。例えば住宅の断熱性を高めるための義務化も始まるだろう。要はなるべく早く取り組まなければ、CO2をたくさん排出する家がどんどん建っていくということだ。性能の高い家を建てることになるべく早くシフトチェンジしないと、住宅業界的にもしんどくなるのではないか。住宅の寿命が約30年とすると、今年建てると2050年過ぎまで性能の低い家が存在し続けることになる。だから今後は新築だけでなく、既存住宅もカバーしないといけなくなるとは思う。 もちろんメーカーだけでなく施主を含めて一人一人がしっかり取り組まないと削減目標は達成できないと思う。だから 協会としては住宅業界としっかり連携・協力していきたい。当協会に加盟している大手のハウスメーカーは、今回の義務量はとっくにクリアしている。一方で建売住宅系の会社とか、ローコストメーカーで太陽光の設置は進んでいないので、第三者所有モデルなどで設置率を上げていくのが一つの方法だと思う。
制度に対する誤解が多いということか
そもそも今回の制度を正しく理解すれば何も問題はないと思う。義務化の対象となる住宅は全ての住宅ではないし、対象も施主個人ではない。日当たり悪い場所とか狭い屋根の家など、なんでもかんでも付けろではない。日照など条件の良いところに付ければ良いというだけだ。 義務化というワードがきついのではないか。だが施主には自由な選択肢が残されている。付けないということもできる。あくまで供給事業者に対して、建てるうちの85%に最低2基という話だ。そこは事業者に対する義務であり断熱も事業者への義務だ。