(提供 日刊不動産経済通信)
―コロナ禍が続く。事業の現況を伺う。
橋野氏 ホテルとレジデンスの複合形態である「レジホ」を東京と京都、大阪で合計15棟380室、運用している。当社の中心顧客である20、30歳代の若い層はコロナ禍を必要以上に恐れない傾向があり、最近は予約のキャンセルが増えにくくなってきた。この2年で訪日客向け宿泊施設の運営事業者らが減ったこともあり、当社が運営を依頼される機会も増えてきた。
―「レジホ」という独自の呼称を打ち出した。
橋野氏 旅館業許可や民泊のスキームで、定借の住居に加え、数日の宿泊や家具付きのマンスリーホテルなどとしてレジを重層的に運用している。大阪市内や東京の大田区などは国家戦略特区法13条で2泊以上の宿泊客を受け入れられる。一方、民泊新法では年に180日間までという制約はあるが1泊の宿泊客を受け入れられる。複数の制度を組み合わせ、1棟の建物で異なる需要を取り込みながら稼働率を高めている。
―どういった宿泊のニーズが多いか。
橋野氏 マンスリーや定借などの長期利用は1、2割で、大部分は短期の宿泊客だ。当社の運営する施設は1室当たり35~40㎡程度の広さのものが多いが、当地の観光を楽しむだけでなく、仲間同士で同じ部屋に泊まること自体が目的というケースも多い。
―施設の稼働状況はどうか。
橋野氏 例えば1棟を稼働率70%で運営した場合、新法で規定される180日の枠を使い切るのに年間257日かかる。残り108日をマンスリーホテルとして回せば悪くない収益が出る。宿泊利用は賃貸の日割家賃よりも単価を高めに設定しているが、最近ではレジの月額家賃を上回る収益が出るようになってきた。
―東京や大阪はホテルの数が多い。差別化の策は。
橋野氏 コロナの感染者数が増えると上位クラスのホテルが大幅に単価を下げ、その動きに中級以下の施設も影響される。ただ当社の施設は1室を3~5人で使うグループ客が多く、2人用が中心の大手ホテルとは住み分けができている。
―施設の出店戦略について。
橋野氏 当社が運営する施設の部屋数は、開業予定のものも含めると19年時点で1000室、コロナ禍直前は700室だった。将来的に1500室に増やしたい。かつては大阪と京都が事業の主軸だったが東京に出店を増やす。東京は競争が激しいが需要も底堅く、レジの空室が増えてもいる。昨年6月に浅草に27室の施設を開業した。他の都市では福岡と札幌も面白い。
―レジホを運営する上での課題は。
橋野氏 コロナ禍で高めの固定家賃を取るビジネスのリスクが認識された。当社はサブリースでレジを借り、目的の異なる宿泊客を臨機応変に受け入れるハイブリッド型で運用を続ける。施設へのIT投資に舵を切る企業も多いが、レベニュー・マネジメントの技術をさらに磨くことで運用成績を上げていく。部屋数は多くはないが需要を着実に取っていける。
―開発を自社で手掛ける可能性は。
橋野氏 考えていない。個人地主や法人、不動産ファンドなどから運営の引き合いが増えており、保有しないスタイルを続ける。海外のホテルは保有と運営、投資の主体が明確に分かれ、日本もそうなりつつある。レジとホテルの両方を運用できる新手のオペレーターとして事業を成長させる。当社は苦しい時期に運営と管理の技術を高めてきた。競合は増えているが、継続に裏打ちされた強みを発揮していく。