シリーズ;コロナ禍の人口移動、首都圏への流入続く④ LIFULL HOME'S 総研 中山登志朗・副所長 チーフアナリスト LIFULL HOME'S 住まいの窓口 高瀬一輝
LIFULL中山氏(左)、高瀬氏(右)

シリーズ;コロナ禍の人口移動、首都圏への流入続く③ より続く

 

ー郊外に向かう人のニーズの中身をどう見るか。

中山氏 テレワークの存在が大きい。テレワークを長期化している企業が大企業中心に増えている。たまに会社へ行くのなら、ある程度の利便性は確保したい。都心の会社までダイレクトで行ける長距離の電車がある沿線。そういう場所はマンション絶対数が少ないし、中古の戸建ては1500万円とか2000万円とかで買える。

 コスパに優れる住宅が郊外は多い。密が避けられ安心してオン・オフができる。ライフスタイルが変わり、もう少し余裕を持った生活がしたい、少しでも広い家に住みたい。そうなると郊外だとマンションよりも戸建てだ。それが安く買えるエリア、という考えになっているのではないか。千葉の房総地域、神奈川・県央以西、埼玉だと所沢とか大宮よりも北のエリアが1500万円〜2000万円で購入可能なエリアだ。
 
 例えば千葉の外房・内房線エリアへ行けば1000万円もしない戸建てが数多くある。それに加えて自治体単位でIUターンを狙って住み替え補助金とかが出るケースも増えてきた。大きな動きにはなっていないが、そういう補助金をきっかけにコロナ禍で郊外へという動きは顕在化してはいる。

 住み替えについては慎重に考えている人が多い。戸建てを売って駅近くのマンションに買い換えるというパターンはあっても、戸建てから戸建てへの買い替えであるとか、都心から郊外戸建てを買うというニーズは、絶対数としては少ない。利便性と居住快適性を天秤にかけて、利便性を確保しておいた方がいいと考える人が数としては多いのではないか。

ー中古戸建ての成約件数が過去最高(東日本不動産流通機構調べ)となったことをどう分析するか

中山氏 コロナ禍であることも要因で、テレワークとか働き方が変わったところが理由としては大きいのではないか。 

 総務省の調査で、東京23区は21年通年でみると5300人ほど転出超過になった。ライフルホームズが実施している「2022年 借りて住みたい街ランキング」では、実際の問い合わせ件数で物件ごとに集計しその最寄り駅を出している。その1位が「本厚木」だった。上位は郊外エリアばかり。これまでトップの常連だった池袋が、前年の5位から12位に落ちた。上位30駅のうち都心・近郊の駅はわずか7駅に留まっている。一般的に住まいの郊外化現象は、借りて住んでいる人に多いと思われる。

 レインズの調査によると中古戸建ての成約は過去最高だが、それは住まいのニーズが郊外にも向いている、と考えて間違いはない。実際に郊外へ転居するような人は、コロナ後もテレワークが無くならないという判断か、テレワーク併用型の会社に転職しようという向きが多いのではないか。

ーライフルホームズは住まい選び・家づくりの無料相談窓口「住まいの窓口」を展開している。現場の目線ではどうか。

高瀬氏「住まいの窓口」の相談者のうち、戸建て注文・新築建売・中古の3類型の中で、中古検討者の割合が大きいのは東京と神奈川となっている。このエリアは土地代が高いし、戸建て検討している人は中古でもいい、という割合が多い傾向にある。なるべく住まいにかかる支出を抑えたいから、中古戸建てということだ。ただし、思ったよりも価格が高いという声を聞くようになった。東京・神奈川は新築住宅価格の上昇が顕著であり、中古の値付けも新築と合わせて高めに売り出される傾向が強いからだ。東京・神奈川の中古戸建てにもその傾向がある。いい立地なら築年数が20年以上経っていても、土地代だけにはならない。

ー新築と同様に吊り上がっていると。

高瀬氏 中古戸建てのニーズは確実にある。ただし買いに来ている人は、「中古なら安く買える」と思っている人が圧倒的多数。実際には新築と中古で価格は案外違わない。でもコロナ前だと、価格は今ほど上がってなくて、ニーズは不在だった。そう考えると、大きな変化が起きていると言える。中古戸建て派は、首都圏では数が少なかった。そこにコロナとテレワークが登場した。中古戸建てニーズは確実に増加している。

 国の中古住宅支援制度がある程度浸透している。中古でも住宅ローン減税の対象になるし、若年層の子育て世代かつ3世代同居すれば最大300万円までの制度がある(21年度予算)。建物のスペックも技術発展とともに年々良くなっている。中古であっても元から耐震性能や断熱性能に優れた物件であれば、リノベの費用も抑えられて、お得に住むことができる。

 住宅購入も新築志向から変わってきて、郊外・準近郊の戸建てに目が向くようになってきた。コロナ後も郊外中古戸建ての需要は続くと見ている。
ただしその前提は、テレワークの継続と定着。これがマストだ。テレワークを止めますとなれば、 一斉に利便性中心の生活に戻る。だが恐らくそうはならない。企業側の事情もある。交通費・光熱費など経費削減できている。コロナ前の事業体制に戻す企業は少数派ではないか。

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