新型コロナウイルス感染症の存在は、私たちの生活や価値観を大きく変えた。変化の一つとして、人々の意識が地域志向になりつつあると感じる(あくまでも「従来と比較して」になる)。視線が地域に向かうことにより、地域への貢献意欲が高まってきているように思われる。
筆者の周りにも、早期リタイヤして地方に移住し、同地域のプロモーションに関わっている友人がいる。別の友人は、出身地の地域衰退を食い止めようとUターンを選択し、実践的に地域創生に取り組んでいる。
筆者が地域づくりを専門としていることもあり、地域と関わり、かつ仕事とするための問い合わせが増えている。そこで今回は、地域創生に関わる手段を例示する。また、筆者の関わっていることも若干アピールさせていただく。
地域創生に関わる手段は、民間企業に勤務する会社員の場合、大きく3パターンある。それは、①会社員の身分のまま関わる、②会社員を休職して関わる、③会社員を退職して関わる、である。
副業人材として活動する
まずは①に関して言及すると、副業(複業)がある。地方自治体の中には、民間企業に勤務する会社員を「副業人材」として受け入れるケースが増えている。生駒市(奈良県)は、①収益確保、②首都圏PR、③観光企画、④ICT推進、⑤人事改革、⑥教育改革、⑦地域活力創生、の7分野に関して副業人材を募集した。生駒市以外にも、渋谷区、青森市、福山市(広島県)、京都市など枚挙に暇がない。
筆者が教壇に立っている社会情報大学院大学(4月より「社会構想大学院大学」に名称変更)の大学院生(社会人)の3名は、会社で働きながら美郷町(島根県)の副業人材として町づくりに関わっている。月に1回程度オンラインで東京と美郷町をつなぎ、職員とプロジェクトを推進するため意見交換している。
副業人材を活用するのは地方自治体だけではない。環境省は、昨年12月に週1~2日副業として勤務する「デジタル化推進マネージャー」を公募した(2022年1月12日まで募集)。読者が勤務する会社の許可が得られる(会社として副業が認められている)なら、副業人材として地域創生に関わることも一案である。
週1回や月1回の勤務時間が取れない場合は、地方自治体が設置している審議会等の委員として関わってはどうだろうか。審議会とは「地方自治体が意思決定を行う際に意見を求める合議制の機関」で、年に数回の開催であるため負担は大きくない。
審議会は公募委員を募集するので、それに応募してもいいだろう。「倍率が高いのでは・・・」と思われるかもしれない。それは杞憂である。公募委員の枠が埋まらず、困っているケースは意外と多い。地方自治体の広報紙やホームページに委員募集のお知らせが掲載される。チェックするとよいだろう。
地域に根を下ろして活動する
続いて②と③のケースを紹介する。国は「地域おこし協力隊」という制度を用意している。要綱には、地域おこし協力隊は「1年以上3年以下の期間、農林漁業の応援、水源保全・監視活動、住民の生活支援などの各種の地域協力活動に従事する者」という趣旨で書かれている。地域創生を実践的に進める者と言えそうだ。
地域おこし協力隊員の活動費は、1人あたり 400 万円まで国が補助してくれる。活動費には報償費も含まれる。報償費は簡単に言うと給与手当で、この手当の額は地方自治体により異なる。また、地域おこし協力隊の期間を終了した後に、起業すると上限100万円の地域おこし協力隊起業支援補助金を受け取ることもできる。
さらに、2021年4月から国は「地域プロジェクトマネージャー」という制度を開始した。要綱を確認すると、「1年以上3年以下の期間、市町村が実施する重要プロジェクトを推進し、地域活性化に向けた成果を上げていく者」という趣旨で規定されている。地域創生をマネジメントしていく者と言えるだろう。地域プロジェクトマネージャーの報償費は、1人あたり650万円まで国が補助している。
地域おこし協力隊や地域プロジェクトマネージャーの問い合わせ先は、地方自治体になる。不定期ではあるが公募をかけるため、ホームページ等を定期的にチェックするとよいだろう(もしくは、直接電話すれば教えてくれると思う)。
社会情報大学院大学は、昨年度から「地域プロジェクトマネージャー養成課程」を開講している。同課程は地域創生に関わる人材の養成を目的とし、筆者が発案者でもある。同課程は定員を超えた応募があった(現在36名が受講している)。そして地域プロジェクトマネージャーに転身した受講生もいる。
③の場合は「起業」する手段もある。ただし、いきなり起業するのはリスクが大きいだろう。そこで、地域おこし協力隊や地域プロジェクトマネージャーを経験し、当該地域の実状を知りつながりを構築した上で起業に取り組むほうがリスクを縮小化できると考える。
2022/2/9 不動産経済Focus&Research