中古住宅購入プラットフォームの「cowcamo(カウカモ)」を展開するツクルバ(東京・目黒、村上浩輝・代表取締役CEO)は、中古住宅の所有者が売却を決めていない段階で、購入検討者から直接フィードバックを受けることができる、売り出し前中古不動産の売買意向のマッチングプラットフォーム「ウルカモ」を立ち上げた。「世の中にない」(ツクルバ)ユニークな取り組みだが、今後どのような展開を考えているのか。村上浩輝CEOとウルカモを担当する山田悠太郎・執行役員に話を聞いた。
ウルカモは「売るかもしれない」人を集めることがポイントとなるが、既存の買い手側のサービスである「カウカモ」とどうコラボできるのか
村上氏 カウカモは1月末現在の会員登録者数は33万人おり、月間200万人以上が利用するサイトで急成長している。このカウカモのユーザープールを生かしながら、今度はサプライサイド、供給者側のサービスを強化することを、今期の戦略として動いていた。その一環として山田執行役員を責任者に「ウルカモ」というサービスを立ち上げた。
カウカモの買い手は数として充実しているが、売り物件情報はどう調達していたか
山田氏 売り物件の情報の仕入れ先は法人と個人がある。だが今まではほとんどが法人メインだ。法人というのは、主にマンションの専有部を個人から買取ってリノベーションし再販する、リノベーション再販事業者と呼ばれる企業だ。当社はこの分野の大手と提携するなど、法人メインの仕入れを行なっている。もちろん個人の売主もいないわけではないが、個人のお客様との接点はそこまで多くない。ウルカモを始めることで、より個人のお客様との接点が増えることを期待している。
売り物件の情報が法人中心であれば、個人よりも情報を集めという点では容易いのではないか
山田氏 だからまず法人のお客様と提携するなどして対応していた。法人が持つ優良な物件を集めていくことで今度は買いたい、という個人のユーザーがどんどん積み上がっていった。こうした状況の中で今までとは別の、よりサプライサイドを強化するという流れになった。背景としては、物件数の供給の減少に対応したいというところがあった。外部の業者に頼ることなく、自分たちでビジネスのレバーを弾けるような状態にしておきたかった。
中古マンションの市況が活発で物件の確保が難しいと。
山田氏 それに加えて首都圏だと大半の再販事業者様とお付き合いがある状況。そこから物件の品揃えを、今よりさらに増やしていくというには限界があり、下手をすればこれまでの成長曲線が横這いになってしまいかねない。だから個人ユーザーを一件一件積み重ねていくことで、成長率を会社として出していく。そもそも買い手にとって商品ライナップの充実はとても大事なこと。そう考えると今回のウルカモのようなサービスはありだと思った。
目標はどうなっているのか
山田氏 ウルカモは、(まだ事業モデルが確実に作れていないなか)スピード優先でリリースを出した。まずこのサービスがユーザーにどうフィットするか。ユーザーのニーズはどこにあるのか。そういったところを探っていきながら、サービスを改善していくフェーズにあると思っている。一気にアクセルを踏み込む段階ではない。計画として、どれくらいの期間で投資を伴う状態にしていくか、内部の目標はあるが、ただそれをいきなりやっていく状態にはないので、まずはユーザー1人ひとりに向き合って喜ばれるものを作っていきたいと考えている。一般的に、スタートアップ企業の立ち上げ期にあるような、年間何億も投資して拡げていくというフェーズはまだ先の話。プロダクトとしての魅力が浸透してからだ。
村上氏 時間軸としては、カウカモがローンチしてから4年でツクルバという会社自体を上場したので、ウルカモはカウカモよりも早い成長をするような野心的な目標は持っている。ただ、どちらかといえば時期にこだわるのではなくて 、マーケットフィットを丁寧にしっかりやっていく。いざこれでやる、となれば大胆な戦略に切り替える。カウカモより早いスピードで成長させてきたい。
サービスを認知させるにはどうするか
山田氏 まずは今回のようなPRだとかSNSを中心に発信するなどして、泥臭く認知活動をやっていく。不動産を売る人は世の中的に、非常に見つけにくい。かつ、ウルカモは世の中にない新しいサービスだ。それを考えると所謂アーリーアダプター層へ広く周知していくことが肝心だ。その中で物件を持っている人がいたら、ウルカモを使っていただければなと。そういう方々はインフルエンサーであったりするケースが多いので、SNSなどで発信していただけるようなことがあれば、それは初期のマーケティング戦略としては理想形だ。まさしくそういう方々はツクルバの社員の周りにもいらっしゃるので、SNS 中心に社員の発信をどんどん強めていく。それで社員の周辺にいる知人というところから拡げていくようなPR戦略がフィットするかなと考えている。
当面はオカネを掛けずにやっていくと
山田氏 購入希望者がウルカモにきて「いいね!」をしてくれないと、そもそも何も動かない。そのため買い手側、カウカモのユーザーにもアプローチする。カウカモで家を探している人で、なかなか理想の住まいが見つからない人がいるとする。こういう方は、ウルカモ側の動線に来てもらって、これから売り出されるかもしれない物件をチェックしてもらう。そこで初めてインタラクションが起きる。現在に限らず、カウカモの過去のユーザーでウルカモに戻ってきていただけるケースもあるだろう。そういう循環が生まれたらありがたい。
仲介エージェントは自社の社員で行う。業者が入る場面は想定していないのか?
山田氏 現時点では両手取引からスタートする。正しい売り手側のニーズを考えると、いろんな方法があり得ると思う。まだ先の話として、他社の買い手側の仲介の方がユーザーを連れてウルカモに来ていただく、そういう世界もあると思っている。仲介会社は「ウルカモに行ったら売り出されるかもしれない物件があるかもしれない、一緒に観にいきましょう」と。そこで実際に内見、取引となれば、その仲介会社にも入ってもらえればいい。外の仲介会社が入ることで、売り手にとっても自分の物件がより広く知ってもらえることになる。なので闇雲に両手ということではない。物件を囲い込むつもりは毛頭ない。ユーザー視点に立った事業モデルにしていきたい。
内見について。売り手は内見にくる人を選別できない
山田氏 ウルカモ上で「買いたいかも」ボタンを押した人には、等しく内見の情報が送られてくる仕組みだ。ただし変な人を排除できない訳ではない。例えば誹謗中傷を繰り返すようなコメントをするユーザーであるとか、内見回数が極端に多く、明らかに買う気がない人。後はプロの人だとかが判明した場合などは、ウルカモの利用規約違反となる。こうした人を我々は弾くことができる。業者利用は現段階ではNGにしている。