緊急事態宣言・蔓延防止措置の期間が空け、コロナとの付き合いが日常化した昨今。オフィス市場はどうなっているのだろうか。所謂「オフィス空室率」の数値からは見られない、オフィス市場の動向を追った。オフィス家具買取・再販で知られるオフィスバスターズで、執行役員兼西日本本部長を務める大﨑博史氏にオフィス家具の買取の状況からコロナ禍のオフィス市場の動きと足元の状況などについて話を聞いた。大﨑氏は東京以外に大阪と九州も管掌する。
―コロナ禍の20年~21年はオフィス縮小の動きが顕著だった。オフィス家具の買取市場に与えた影響は
大﨑氏 20年は通年で縮小移転の動きが多かった。なかでも大企業の縮小の動きが活発だった。大企業の場合はコロナ禍の比較的早い時期、20年3月には移転の動きがはっきりと出た。それによって我々のビジネスでいえば、大企業からの買取で大型案件が増えた。大企業はオフィス家具の数量があり、かつ使用状態が良いものが多い。良質な中古オフィス家具がマーケットに大量に流れ込んできたのが20年だ。当社の20年の中古オフィス家具の買取件数は19年比で2割以上アップした。
―テレワークとの関連は
大﨑氏 コロナ禍によるテレワークが大企業中心に広がったおかげで、個人の在宅ワーカー向けのチェア販売がコロナ禍前の5倍~10倍に激増した。これによって中古オフィス家具の全体の販売量もグッと上がった。当社のようなビジネスでは買取と併せて、どう売りにだすかが大事。当社では専用の中古オフィス家具販売サイトがあってそこで販売を行っている。ユーザーは個人も法人もいるが、法人向けが中心だ。
―法人向けの販売はどうだったか
大﨑氏 法人ユーザーが大半だが、個人ユーザーもその勤め先である企業、特に大企業からの問い合わせも増えた。当社が積極的な買取りを行っていたため、市場における認知度がこれまでよりも高まったことが大きい。これまで当社に問い合わせをいただけなかったような規模の企業から問合せが増えた。コロナ禍をきっかけに働き方改革をしないといけなくなった企業が、なるべく予算を抑えたいという発想から、オフィス家具の売却や中古家具の購入に動いたのだと思う。
―21年の状況は
大﨑氏 21年は20年に比べるとオフィスの縮小や移転、レイアウト変更の件数は減った。大企業を中心に20年である程度やり切った会社が多かったのだと推測している。買取りの実績は20年よりもダウンした。21年は20年比で5~10%マイナスだ。一方で販売は20年よりも21年のほうが伸びており、昨対比10%はアップした。22年の買取・販売は21年とほぼ同水準で推移している。
―ニーズが減った状況でどうだったか
大﨑氏 コロナはまだまだ続くという認識が市場で根付いた。そのためコロナに合わせた新しい働き方のためのレイアウト変更・内装案件が増えている。コロナをきっかけにした働き方改革があったため、移転がさほどなくても、レイアウト変更が進んだのでなんとか仕事がもらえていたというのが実情。当社の収益に占める中古オフィス家具の販売額は35~40%しかない。残りは新品家具販売と 内装工事、通信インフラ工事、運搬費などが残りの60%を占める。
―内装工事・レイアウト変更のトレンドは
大﨑氏 コロナ前までは、単体デスクに単体チェアできっちりスペースを埋めるレイアウトが一般的だった。それがコロナ禍により密を避けるためのスペースを開けたレイアウトが主流となりつつある。コロナ後は「ジグザク座り」のレイアウトや、大型テーブルで 「どこ座ってもいいよ」というフリーアドレスの働き方が当たり前になるのではないか。
業種別でみるとメーカーはワークブースを入れてウェブ会議をしやすい設計にする事例が多い。こうした動きは結構高額なレイアウト変更になる。そのため付帯的な工事も受注できている。例えばタイルカーペットを高価な仕様に変更したり、パーテーションもシンプルなものから、柄の入ったお洒落なものにしたり。エントランスも造作から作り直すとか、こうした動きがあり受注できた。
―地域ごとに特徴はあるか
大﨑氏 東京と大阪を比較すると、東京は在宅・テレワークの比率が高い印象を受けている。IT企業の比率が大きいためだ。一方で大阪の場合は、ウェブ会議はするものの、実際に対面を求めるケースが多い。大阪の街を歩けばサラリーマンの数が多いことに気が付くはずだ。大阪はあまりテレワークをやらない印象がある。製造業が多いのでアナログな仕事が残っていることや、そもそも人との触れ合いを重んじる地域性があるからだ。いまも大阪のテレワーク率は低いままだと思う。
―大阪の足元の状況は
大﨑氏 20年度は買取が10%増、販売が20%増となった。大阪は昔からの繋がりがあるメーカーや公営住宅管理会社といった企業のリピーターが多いためだ。レイアウト変更したり拠点をつくったりといった案件が今年3月に重なった。
―福岡の状況は
大﨑氏 福岡は「天神ビックバン」「博多コネクテッド」による再開発が進んでいる。空室率はこれまで2%前後だったが新規供給が相次いでいることから足元では5%前後ぐらいまで上がっている。ただしその中身は、満室稼働で立ち上がるビルもあれば、テナント付けがまったくできてないのに竣工するビルも増えていて、格差がかなりある。
エリアとしては天神の動きはいいが博多は需給が悪い印象を受ける。話題になっているグーグルの福岡の拠点も天神ビジネスセンターに入居したもようだ。移転需要がはっきりとでているので福岡は好調だ。当社はオフィス家具の買取・販売についてはコロナ禍前より1.5倍に伸びている。22年はまた供給が増えるので、さらに伸ばせるとみている。
ウィズ・コロナ時代のオフィス市場② オフィス家具の買取・造作マーケットからみる市場動向 オフィスバスターズ(下)へ続く