新時代の管理運営を探る54 マンション管理60年目の大改革 社会資本として行政の積極的な関与が可能に(下); 飯田太郎(マンション管理士/TALO都市企画代表)
マンションタイムズ

新時代の管理運営を探る54 マンション管理60年目の大改革 社会資本として行政の積極的な関与が可能に(上)より続く

 

次の課題は、区分所有者を
管理の担い手として育成すること


 今年4月の適正化法施行を前に、マンション管理関係者の関心は管理計画認定制度の内容に集まっている。マンションの管理状況が自治体によって評価され、その結果がマンション管理センターのホームページで公表されることになると、これまで市場で判断できなかった、管理状況が適正なマンションが分かるようになる。自治体による認定制度は認定したマンションを公表するだけだが、同時に運用が始まるマンション管理業協会によるマンション管理適正評価制度は5段階評価である。また日本マンション管理士会連合会が既に運用をしているマンション管理適正評価サービスは3段階評価である。
 似たような名称の3つの評価制度が併存することによる混乱を避けるために、申請窓口を一本化するための協議も進められているという。3つの評価システムの結果を併せて見れば、管理状況の良し悪しが具体的に分かるようになる。マンションの管理状況が中古市場での取引価格に反映され、「マンションは管理を買え」が実現することが期待できる。


 管理評価制度が整備されると、次に課題になるのは、マンションの将来展望である。マンションを終の住処と考える人が多数を占める時代に必要なことは、30年、50年先の社会を想定した管理組合運営である。将来を見通すことは難しいが、人口構成についての将来予測はほぼ確実に実現する。今後、人口減少と高齢者の増加が進むなかで、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が発生する可能性は極めて高い。地球温暖化への対応も求められる。管理組合がこうした課題を受け止め対応するためには、将来を見通すビジョンを持つことも必要である。マンション管理センターが2020年8月に長期マネジメント計画の作成を提案した。管理組合の運営方針やビジョンを区分所有者が共有することも、困難な時代に対応するためには必要である。
 これからは管理組合ガバナンスを強化することに加えも、担い手を育成することも重要な課題になる。4月に実施される管理計画認定制度では、管理組合の担い手について評価する項目はない。管理規約や長期修繕計画等の各種の書面や会議の開催状況、予算等は評価されるが、管理者が区分所有者か外部の専門家かは問われない。マンション管理士や管理業者等の外部の専門家を管理者とする第三者管理方式も含め、適正な管理が担保されれば良いということでもある。しかし、災害発生時の緊急対応や日常的な高齢居住者等への支援等は、マンション外に拠点をもつ第三者である管理者にできることが限られる。区分所有者やその家族を管理の担い手として育成するための方策を検討する必要がある。

 2022/1/5 月刊マンションタイムズ


 

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