2022年の分譲マンション市場は超低金利の継続、持ち家志向の継続、良好な需給バランス、住宅ローン減税等の継続など、2021年からの市場環境のまま販売は概ね順調に推移した。ただ売れ行きを細かく見ると、購入体力が高い富裕層やパワーカップル向けの好立地商品の販売は好調でも、一般実需向け商品の売れ行きにはやや減速感も見られた。2022年の市場を振り返り、2023年の市場と課題と展望を見る。
2022年は郊外部でもマンション価格が上昇
割安感のある埼玉・千葉で高い販売好調率
2022年は引続きコロナ禍による賃貸脱出、持ち家志向が強く、マーケットは比較的順調に推移したが、マンション用地不足が影響し、供給量は23区が前年比18.8%減、都下が19.2%減、神奈川も14%減少した。一方で、比較的割安な価格水準の埼玉・千葉はマンション開発用地が豊富なうえ、デベロッパーのマンション事業意欲が高まったため供給は活発。その結果、23区のシェアが37%に低下した一方で、埼玉・千葉のシェアがそれぞれ15~16%に上昇、郊外方面のマーケットシェアが高まった。
平均単価を見ると、首都圏平均で314.4万円で1.6%アップに止まった。郊外化が進んだため平均単価の上昇は少なかったが、都下・埼玉・千葉等の郊外部で大幅上昇した。コロナ禍で郊外需要が増加し、デベロッパー各社が郊外に販売エリアを拡大する動きが強まったことと建築費の大幅な上昇で、埼玉・千葉等の郊外部でもマンション価格が上昇した。また、それ以外の地域でも都心3区、城南・城西・城北や横浜、川崎等、需給バランスが良好なエリアや利便性の割にこれまで割安評価だったTXや舎人ライナー沿線等のエリアの価格が上昇し、価格の横並び化が進んだ。
価格上昇により、コロナ禍で好転していた販売がややスローダウンしたものの、昨年発売した物件は用地仕入れ時期が今より割安で建築費も割安だったため、販売価格の設定には比較的余裕があり、事業収支上もプラスアルファで取り組むことができたため、マンション事業に関しては各社とも高収益となった。
足元の売れ行き実態を見るため、トータルブレインが2022年に首都圏で供給された339物件にヒアリングしたところ、「好調」が157物件(46.3%)、「まずまず」が161物件(47.5%)、「苦戦」が21物件(6.2%)だった。販売は悪くなかったが、2021年に比べると好調率が10%低下し、まずまず比率が10%以上上昇している。エリア別では価格上昇が著しい23区で好調率が15%ダウン、価格が上昇するも比較的割安感のある埼玉・千葉だけが好調率50%台を維持した。駅距離別では、5分圏の駅近物件の好調率は引続き高いが、2021年に絶好調だった15分圏や15分超の駅遠物件の好調率が低下してきている。2021年はコロナによる持ち家志向の高まりで、購入予定者は郊外や駅遠でも買える価格の物件を探し始めたため、割安な郊外・駅遠物件の販売好転がはっきりと見られたが、2022年は建築費の上昇を受け郊外・駅遠市場でも価格上昇が見られるようになり、販売にブレーキがかかり始めている。トータルブレインの杉原禎之副社長は「郊外・駅遠エリアは予算アップが難しく価格許容力が低い。価格上昇で需要が減少か」と話す。価格上昇で間取りや面積にも変化が出始めており、コロナ禍の価格上昇で、30㎡台の1LDK、50~60㎡台の2LDK、面積を圧縮した3LDKが増加、グロス重視志向がさらに強まっている。郊外部でも50~60㎡台の圧縮型ファミリータイプが増加している。