東京都中央区晴海の東京五輪選手村用地の土地売却を巡り、東京都の民間事業者への土地譲渡価格が不当に安すぎるとして都が市民グループから訴えられていた裁判で、東京地方裁判所は23日、東京都等に対する原告側の複数の請求をいずれも棄却した。敗訴を受けて、原告側は控訴を決めた。
原告団は、東京地裁が認めた「オリンピック要因」だけでは129億円という価格は成立し得ないとした。「都が都市計画決定手続きを経ず、正式な不動産鑑定評価書も作成されず、1通の価格調査報告書のみで公示価格の10分の1以下の価格で売却した行為に対して、その違法性を認めず住民らの請求を却下、棄却したことは、極めて不当な判断」であるとして、「原告団は直ちに控訴する」ことを決めた。
選手村用地の地権者は東京都1者。そのため「地権者、施行者、認可権者が全て都であり、個人施行として都市計画決定を経ない再開発事業を実施した。都による地方自治体の財産の管理処分に関する法令の適用は除外されるとの主張は、脱法的な都市再開発諸制度の濫用を正当化する誤りを犯している。今後、全国の自治体は自治体財産の直接譲渡について再開発制度をカムフラージュとして使うことになるのではないか。地方自治法のあらゆる規制をすり抜けて、自由な価格で売却できることになる」(原告団)と主張した。
官製談合の根拠については「東京都は土地価格の調査報告書作成前に、東京都が事業協力者として募集し、綿密な事前協議を行なって権利返還計画に定める土地価格等を協議している。その実態は巨大官製談合だ。一連の協議記録を東京都に対して情報公開を請求したところ『1年以内に廃棄する文書であり廃棄済みであり、公開できない』との回答であり、極めて不適切だった。裁判所も特定建築者への調査嘱託を採用しなかった」とした。
今後の裁判については「公文書保管、開示という行政の公正さの担保がなされていない重要な問題であり、判決内容は地方自治法、不動産鑑定制度、再開発事業制度の根幹を揺るがす不当な内容だ。原告は直ちに控訴し、司法に対し公正な判断を求める」と述べた。