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横浜市立大学国際総合科学部 まちづくりコースでは、毎年「郊外の空き家対策」として、「まちづくり実習Ⅱ」(担当教員:齊藤広子教授)を行っている。この実習は、まちづくりコースに所属する3年生が5名1班に分かれ、与えられた課題に約40日間で取り組み発表を行うもので、2016年より産官学連携(横浜市・金沢区・京浜急行電鉄・京急不動産)でスタートし今年で5回目となる。コロナ禍における実習ということで、取り組みおよび発表は遠隔で行われた。今回は「空き家を使ったまちづくりwithコロナ/afterコロナ」をテーマに、7月末に発表会が行われた。

対象地域は横浜市金沢区、空き家をどのようにリノベーションしてまちづくりを行うのか、数十年先を見据えた長期的視野に立ち収支計画等を含めたプロジェクトを各班が策定した。利用する住宅(空き家)は学生が検討・選択。現地調査が不可能なため、各種地図を利用して空き家を探し、その地域の分析を行ったうえで、法規制、用途地域、条例、地区計画、建築協定等の確認を行い、プロジェクトをより実行可能なものとするためマーケットリサーチ、周辺の住宅価格相場等およびニーズ把握の調査結果も加味している。各班の発表時間は7分間、発表内容は以下の通り。

1班「CO-食処~食でつながる場~」

金沢区はキャンパスタウンなため学生が継続的に流入する点や地域住民が「人付き合いの多い地域となることを望んでいる」点に着目。学生が気軽に交流できる場所の提供をテーマに掲げ、夕食のサブスクリプションサービスを提案している。仲間とのつながりを実感できる場所であるとともに、豊かな食事環境を提供。オープンスペース機能(昼間時は部屋やキッチンの間貸しを地域住民に行う)を持たせることで、地域活性化のきっかけとなると想定している。収支計画では6年目からの利益を見込む。

2班「∞kei Work Style

~職も食も健康に~」

コロナ禍により、「集中して効率よく仕事ができる」「きちんとした食生活を提供してくれる」場所へのニーズがあると分析し、金沢区初の食事付きコワーキングスペースを提案。メインターゲットは社会人と学生。「朝ごはん付き(提供プランは3食付きと朝・昼食付きの2パターン)で生活リズムを整え集中力が高まる」「テレビ会議用個室」「社会人と学生の交流イベント実施」を特徴に掲げている。使用する空き家は金沢八景駅徒歩3分。1Fはカフェレストランスペースで地域住民も利用可能、2Fがコワーキングスペース。運営主体にはNPO法人を立ち上げ、カフェは企業を誘致、5年で資金回収を行う計画。

3班「みんなで“つくる”いえ」

自然豊かだが都心へのアクセスは良好という金沢区の特徴を活かし、「住む・夢・交流」をコンセプトに、自分たちで“つくる”いえを提案している。メインターゲットはアート系アーティスト、建築系、内装にこだわりを持つ人。1階共用部は居住者と地域住民で協働してリノベーションを行う。2階は個人用賃貸6部屋、自由にリノベーションを行えるとする。月2~3回、1階部分で個展やバーキュー等のイベントを開催し地域住民へも開放する。家賃収入により、初期費用回収は1年半を見込んでいる。

4班「本の和」

地域住民が交流できる場所を提供。古本やフリーペーパーを置き、読んだ本の感想や推薦図書を掲示板や感想ノート等に書き込んでもらい(対面しないコミュニケーション)、本を通じた交流拠点となることを目指す。1階は古本屋および掲示板スペースに加え、地域住民が交流できるフリーマーケットスペースとする。2階はリーディングスペース等くつろぎの空間を提供。主な収益は入場料と本の売り上げで、5年で初期費用の回収を見込んでいる。掲示板や感想ノートの設置はリピートしたくなる仕掛けとしても有効。

5班「空き家×釣船店×金沢区」

コロナ禍により密が避けられる釣りに注目が集まっている点に着目、「空き家×釣船店×金沢区」を提案。対象空き家は金沢八景駅より徒歩10分で釣り船店に隣接、1階は食堂と物販スペース、2階はシャワーブースと洗濯機設置のリノベーションを行う。釣りをする人(初心者含む)に加え、食堂で魚料理を提供することで一般の人々もターゲットとする。金沢ブランド(金沢区推薦の43品)を物販スペースに置くことに加え、食堂の料理にも利用し金沢区の認知度アップに貢献する。釣った魚が余った場合には連携店で利用可能なクーポンと交換できる仕組みとし、周辺地域への人の流れを誘導する役割も果たす。

6班「DAIK:DIY & Atelier In Kanazawa」

金沢区のSWOT分析で、ものづくり・豊かな住環境に着目、スタートアップ事業に適していると判断。目指すのは、DIYを通じ地域全体の暮らしを豊かにする拠点。ターゲットはアトリエを持たないデザイナーやDIYに興味のある素人、社会人。地域住民と応募者がワークショップを通じて空き家をリノベーションし、廃材リサイクルショップ、DIYスペース、DIYデザイナーズ・シェアアトリエを設ける。海の流木やシーグラス、工業団地の産業廃棄物や廃材の加工品に加えデザイナーの作品等も販売。シェアアトリエでは自由な制作活動が可能で、廃材ショップの材料を自由に使用できる。地域住民にも月額制でDIYスペースを提供する。

7班「LAN LEARN LAUNDRY

~繋がる学べるランドリー~」

対象とする大道地区は一人暮らしの学生と子育て世帯が多いため、コインラドリーが身近にあると便利と分析。コンセプトは「贅沢としてのコインランドリー」。活用空き家は隣り合う2軒、メインターゲットは主婦。コインランドリーではせっけんをバイキング方式で利用できる。洗剤の量り売りも行う。もう1軒は活動スペースとして、無料の衣類取り扱い講座やミシン体験等のワークショップを行う。中庭では、布団踏み洗うなどのイベントを実施。洗濯機および乾燥機を複数台設置するため初期投資は約2000万円。収入はコインランドリー利用料金と洗剤販売で6年での回収を見込んでいる。

8班「(ふち)から始まる(えん)(ゆかり)

コロナの影響で、人との出会いが激減、一人暮らしは孤立化、在宅ワークではON/OFFの切り替えが難しいと分析し、「金沢区に縁を持つ人を増やす、人それぞれが自由な使い方を可能とする自宅でも職場でもないみんなの学び舎」というコンセプトで、各種空間を提供。ターゲットは、大学生、会社員、地域住民。利用空き家金沢八景駅より徒歩9分。1階はカフェ・バー、くつろぎのスペースと12畳の和室もしつらえる。2階は個室ワーキングスペース(8室)。200円/h、500円/3hに設定。縁側と庭も活用し、DIYや映画鑑賞など毎月イベントを開催しで「楽しむ・学ぶ・くつろぐ」を実現していく。

9班「けいひんゲーム

きゅうこう計画」

空き家とゲームを結びつけた2提案。ゲーム業界はコロナの好影響を受けた業界の1つで、Eスポーツの競技人口は世界第4位まで拡大と、アフターコロナでも引き続き成長が見込まれる点に着目している。1つ目はゲーミングハウスの運営。ターゲットはゲーマー、ゲームクリエイター、ユーチューバー。1階は共用部、地域住民開放のミニシアターや動画配信用の撮影ブースを設置、2階はシェアハウスとする。2つ目の提案はゲーミングカフェ&バル。昼は高齢者、夕方は小中学生、夜は大学生・社会人と、幅広くターゲットを設定。ボードゲームやカードゲームも揃えて幅広い層に訴求をはかる。

教育優秀賞は7班

学生賞は7班。京急グループ賞は、「長期的な事業展開が考慮されている。全く考えていなかった取り組みの視点の示唆をもらえた」点から9班が選出された。金沢区賞は2班。横浜市都市整備局賞は、「地域資源の活用、空き家活用プロセスに地域住民が入っている、施設の一部が地域に向かって開放されている」という点から3班が選ばれた。横浜市立大学の教授陣による教育優秀賞は7班。Withコロナ/afterコロナを考慮し、ビジネスの観点からも成功可能性が高そうだと判断された。

最後に、担当の齋藤教授は「どの班も課題の趣旨をよく理解し、空き家を利用した魅力的な街づくりのプランを作成してくれた」と、これまでとは違うオンライン発表会に上手に対応した点も含めて学生の健闘を強く称えた。

不動産経済FAX-LINE  No.1288  2020.8.26

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