三井住友銀行(SMBC)および日本政策投資銀行(DBJ)は10月19日、ジャパン・プライベート・エクイティ・オポチュニティ2021へ有限責任組合員(LP)として出資することを発表した。同ファンドは、プライベート・エクイティ(PE)・ファンドのセカンダリー投資を目的にしており、国内でセカンダリー取引の実績を有するWMパートナーズ(WMP)が無限責任組合員(GP)として運用し、PE投資の経験豊富なエー・アイ・キャピタル(AIC)が投資助言を行う。
同ファンドは、WMPおよびAICとそれぞれ資本関係を有するDBJ 、SMBCがアンカー投資家となり、主に日本のPEファンドへ投資を行い、国内セカンダリーマーケットの拡大へ貢献していく。なお、2022年9月末を目処に国内投資家から追加出資を募り、総額100億円規模を目指す。
セカンダリー市場は現在、PE、不動産、インフラストラクチャー等、プライベート市場においてポートフォリオ戦略などに関わる重要な市場として進化を続けている。グローバルでの市場規模は、2019年に約880億米ドル、コロナ禍で2020年は若干減少したものの、2021年は1000億米ドルに達するという見方もある。一方、国内においては、およそ数百億円と未だ小規模で、「2013年から2016年の概ね投資期間が終了しているバイアウト、ベンチャーキャピタルのファンド組成金額だけでも累計2兆円あり、プライマリー市場規模を考えるとセカンダリー市場の成長余地は大きい」(三井住友銀行担当者)。実際に、投資家層は従前からの機関投資家に加えて、企業年金基金や地方銀行などへと広がっている。
従来のセカンダリー市場は、流動性が低く、プライベート投資の継続が困難となった投資家に関連したオポチュニスティックな市場といった見方が強かった。だが昨今では、①LP投資家へ早期の分配金回収が見込める、②独自アクセスが困難な優良ファンドへの投資機会獲得、③セカンダリー取引によるビンテージ、投資先銘柄の分散効果などを見込み、特にGP主導の取引が増加している。セカンダリー投資には、ファンドの投資先企業、バリュエーション、見通しについての分析は欠かせない。今回組成されたファンドでは、WMPがGPのポジションだが、「両者が知見を活かして共同で運用していき、日本のセカンダリーマーケット拡大を目指す」(WMP徳永康雄社長)と展望を述べるように、「約450ファンドと国内最大規模の情報量を保有する」(AIC佐村礼二郎社長)AICと、2002年からセカンダリー投資の実績を持つWMPの目利きを活かした盤石の運用体制を構築した。
約1年半のコロナ禍を経て、投資先によっては業績回復へ向かう途上にあることから、買い手側の判断が後ろ倒しとなり、結果的にバイアウトファンド等で投資期間が長引く可能性がある。セカンダリー取引は、こういったPEファンドの売却需要にも応える。また、2013年頃に多く供給されたPEファンドの満期が近付きつつあり、持分処理の需要が発生する可能性もある。その他、多様な流動化ニーズが潜在的に存する市場で、GPとLPのリレーションを活かした戦略が展開されていく。
2021/11/15 不動産経済ファンドレビュー