世田谷区、空き家対策マッチングサイトを12月中旬から本格スタート(上)より続く
事業者登録を開始、サイト運営は空き家活用株式会社
ー「せたがや空き家活用ナビ」に至るまでの経緯について
千葉氏 これまでは空家等の活用メニューに「地域貢献活用」という項目を入れており、地域交流の活性化など非営利の活動に貸し出すという利活用方法を提案していたのだが、このメニューだけでは活用を促すことが難しい面もあった。そこで新たに「民間流通」を加えた。民間の取引に行政が踏み込む余地はないのだが、現実的には空家等がスムーズに市場へ流れてはいかない。そこに危機意識を持ち始め円滑に市場へ流す、所有者等の背中を押す仕組みを作らないといけないと考えた。
空家等の除却のために公金を使うというのは、税負担の公平性という観点から難しい。そもそも区内の不動産ならば、役所が絡まなくても、民間だけで回すことができる。役所ができることは問題になっているところを支援するところ。だから空家等の処分に困っている所有者等が、不動産流通市場に出すための、背中を押す仕組みを作ろうと考えた。流通は不動産業者の役割となるが、どうすれば所有者等の意思決定をサポートできるか。そこから検討がスタートした。
ーそれまでの取り組みは
千葉氏 今まで区は不動産業者や金融機関など15の団体と協定を結び、窓口を設けて対応してきた。ただし相談窓口は統一されておらず、空家等の問題別に13もの電話番号が列記されていた。専門分野が分かれていることが、区民の相談を受付けにくくしていたのではないか。加えて区民とのコミュニケーションは役所では電話になる。メールやウェブ上でのやりとりは役所ではできない。コミュニケーションを円滑にできる仕組みも必要だ。所有者と業者とのやりとりをシームレスにできないか。こうした課題を解決するツールが「せたがや空き家活用ナビ」だ。
ーせたがや空き家活用ナビの役割について
千葉氏 空き家の所有者が、安心して相談できる場所を提供することと、事業者とのやりとりにかかる負担を減らすことで、気軽に比較検討ができて、納得して契約に至る対応ができる。所有者は自分自身で幾つも見積もりを取ったりしなくても、ナビを介してこれがいくらとか明確にわかるようになる。比較検討が可能だ。一方的に営業されることもない。空き家所有者の登録が11月24日から始まり、区の広報誌に一度だけ、予告を掲載しただけで、既に数件の反響を得ている。大々的な広報はこれからだ。広報誌は区民向けなので、区外の在住者で世田谷区に家屋を所有している人への認知を高めていきたい。
ー事業者登録の状況は
千葉氏 事業者のページは12月20日に開設する。これまでの反響は、区と空き家活用との協定締結の報道が出てから、正式に募集してはいないが問い合わせが様々な業種から来ている。区に寄せられたものだけで20件前後。不動産業とか、骨董品関係、金融機関など複数からあり、リノベーション業者からもある。所有者の持ち出しなしでリフォームを行い、一定期間借り上げるという活用型のビジネスを展開しているところもある。20日10時から応募受付し、与信などの審査を経て順次正式な登録というスケジュールだ。
ーサイトの運営について
千葉氏 ナビの運営は区が協定を結んだ空き家活用(株)に一任する。ナビには空き家活用(株)のスタッフが「相談専門員(アドバイザー)」として必ず入る仕組みだ。所有者からの悩みを相談員が受け付けて、業者に投げるとなったときに、相談専門員が条件を提示、登録事業者は当社ならばこういうことができると。相談員が受け取って所有者に提示する。所有者と事業者は直接コンタクトすることはない。
ー区にとっての空き家対策のゴールは
千葉氏 ナビという仕組みを作って、周知させて円滑に利用ができるようにしたい。空き家という存在が稀なものとなればと願っている。区の仕事としては空き家所有者への連絡先をどうやって探すかとかではなく、空き家の発生の予防の方に向けられれば。周知と啓発という段階にシフトできればと思う。世田谷区では「そのまま放置されている空き家をどうするか」がテーマだ。活用する意思があるのに市場に出ない空き家をどうするかだ。空き家といっても、適切に管理されていれば何の問題もない。だが空き家をそのまま放置すれば、樹木が繁茂して近隣から区へ苦情も来るし、所有し続けるならば少なくとも管理は適切に行われなければならない。