潮目の変化を敏感に察知する…  ―首都圏マンション市場の今後を見る(上)
不動産経済ファンドレビュー

 


都心から郊外まで全エリアで好調だった、2021年の首都圏分譲マンション市場。コロナによる需要増大も手伝いデベロッパー各社が高収益を出す一方で、販売が好調なだけに事業用地の取得競争が激化し、土地高騰と建築費の高止まりの中、先行きは難しい舵取りを迫られている。2021年のマーケットを振り返り、今後の方向性を見る。


2021年の供給はコロナ前上回る3万3636戸
駅遠物件も割安感から売れ行きは好調維持


 コロナ禍でも分譲マンション市場は好調に推移している。不動産経済研究所のデータによると、2021年の首都圏マンションの供給戸数は3万3636戸で前年を6408戸上回り、コロナ前の2019年をも上回る大幅供給増だった。エリア別にみると、前年に供給が多かった都下が2921戸(9.90%減)に落ち込み、逆に供給が少なかった神奈川が8609戸(54.11%増)、埼玉が4451戸(32.19%増)へ急回復し、どのエリアも概ねコロナ前の供給水準に戻っている。一方、供給割合はコロナ前は45%前後で推移していた23区が40%と引続き低調で、23区の割合が低下した分、神奈川・埼玉・千葉の供給割合が増加し、郊外化が進んでいる。マンション販売が好調だったことは在庫数からもわかる。2021年の年末販売中在庫数は6848戸で、2020年末の8905戸から2057戸(23.1%減)と大幅減少した。新規供給が増大する中、販売中在庫も進捗した。完成在庫も2725戸と前年末の3283戸から17%減少している。新規発売物件の価格上昇に伴い、販売中在庫・完成在庫の割安感が強まり、順調に進捗していると考えられる。
平均分譲単価は、首都圏が309.4万円で前年比1.1%上昇、2019年比では6.5%上昇した。エリア別では2020年に販売苦戦だった都下と、供給大幅増の神奈川が下落したが、23区は2年間で14.2%上昇しており、利便性重視志向は変わっていない。平均価格は首都圏で6260万円と2.9%上昇。エリア別では単価と同様、23区と埼玉で大きく上昇しているが、都下・神奈川・千葉では平均価格が低下しており、郊外での販売価格が低下傾向にある。供給エリアの更なる郊外化と面積圧縮傾向が要因とも見られている。


 調査会社のトータルブレインが調べたエリア別の単価推移を見ると、都心部ではコロナ期間(2019年から2021年)の上昇率が19.7%と大幅上昇しているが、2021年に割安な練馬区の供給が増加した城南・城西を除き、城東・城北エリアでも13%の上昇が見られる。都下・神奈川は上昇率が4~5%と低いが、埼玉・千葉といった郊外部では10%以上アップし、郊外部でも単価上昇が始まっている。また同社は首都圏で供給された354物件に売れ行きの実態調査を行っており、160物件(55.7%)が「好調」、99物件(34.5%)が「まずまず」と答えた。エリア別では23区の好調に加えて、神奈川・埼玉・千葉といった郊外でも販売が好調。価格上昇が続くなか、1次取得のファミリー層に比較的買いやすい郊外価格の割安感が響いた。それを裏付けるように駅から徒歩11~15分超の駅遠物件の販売が好調で、近年の利便性重視や駅近立地最優先の傾向に反する動きが出ている。「郊外・駅遠でも割安なら売れるというのはコロナ前のマーケットには全くなかった動きでありコロナによって持ち家志向が高まった結果」(杉原禎之副社長)と見る。
2021年は23区以外の郊外でも用地取得競争が始まったほか、コロナ対応が商品企画の喫緊の課題となり、ソフトとハードの両面でウィズコロナの商品企画が行われた。また、地球環境問題に対応するため、ZEH-Mの標準化を始めとしたSDGs、DXへの取組みが本格的に始まった年でもあった。

潮目の変化を敏感に察知する…  ―首都圏マンション市場の今後を見る(下)へ続く

2022/3/15 不動産経済ファンドレビュー

不動産経済ファンドレビュー
コメントをどうぞ
最新情報はTwitterにて!

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめ記事