東京都板橋区は、都市再生機構(UR)の大規模団地「高島平団地」を抱える高島平エリアの再生に向けた動きに取り組む。UR団地の一部建替えが検討されるのを踏まえ、エリア内の区有地も使いながら分譲団地の建替えを誘導するなど、エリア全体での価値向上に取り組む姿勢をみせる。分譲と賃貸が混在する団地では建替え・再生の足並みが揃えるのが難しい中、区の活動がひとつのモデルになるか期待される。
高島平団地は1972年から入居が開始された総戸数が1万戸を超える大規模団地。URが供給する団地としては最大で、賃貸住宅が8000戸以上を占める。14階建てなど高層化している点も大きな特徴となっている。エリア南東側に賃貸団地、南西側に分譲団地が広がっている。
区は、URが同団地の再生に着手する方針が示されたことを受け、高島平エリアのまちづくりビジョンを示すこととし、このほど「高島平地域都市再生実施計画」の素案をまとめた。対象エリアを高島平1~9丁目の約314haとし、そのうち賃貸団地が占める2丁目、分譲団地がある3丁目を重点地区に、3丁目にある旧高島第七小学校跡地などの敷地約2haは再整備地区に指定。これらの地区での都市再生事業を進め、エリア全域に都市再生を波及させる方針としている。計画期間は2045年度まで。
重点地区での再生ビジョンでは「小学校跡地の利活用や、老朽化した大規模住宅団地や公共施設の適切な更新に合わせて、駅周辺に住宅機能に加えて生活を支える都市機能を集積し、交流核や生活核を形成」と掲げた。その実施に向けた展開方策として「再生連鎖モデル」を示し、段階的な整備を続けることで賃貸団地と分譲団地を再生していく姿勢を示した。
具体的には、「ステップ1」として再整備地区を活用して公共施設の集約や賃貸住宅の整備などを行う。それにより生まれた賃貸住宅や公共施設の跡地を種地とし、団地の建替えなどに充てるのが「ステップ2」になる。ステップ2により新たな種地が創出され、その敷地を生かして別の住棟を建替える(「ステップ3」)。まちづくりに必要な機能を集めやすいほか、従来から居住する住民の生活を継続させやすいといったメリットが見込める。
開発に当たっては民間事業者のノウハウも生かせるとみている。区が行ったヒアリングでは、分譲団地を一体として2000戸程度を数年かけて供給する規模で参画の可能性があるとの声が寄せられたほか、マンション建替え事業や市街地再開発事業などの手法の可能性も指摘されている。
計画の起点となる再整備地区での整備は、実施計画では2025年度までの着工を目標としている。生活の継続性に配慮した機能や、近くを流れる荒川の氾濫などに対応する防災性の確保、日常的な憩いやにぎわいの場の創出とともに災害時の避難場所としても機能する広場の整備などを方針付けた。実現に向け、区は地区計画の設定や用途地域の見直しを検討するほか、エリアに設定されている一団地認定の取扱いなどの議論も行う構えだ。
分譲団地との連携については、管理組合や区分所有者による合意形成の状況に応じた支援体制を敷く。合意形成の深度化に合わせた一団地認定の取扱いに関する検討支援や、UR団地を活用した仮住居確保の体制づくりなどを想定していく。
2021/12/5 月刊マンションタイムズ