新時代の管理運営を探る㊼マンションを終の棲家とするために 築50年を目標にブランディング戦略を推進する(上) マンション管理士/TALO都市企画代表・飯田太郎


 国土交通省のマンション総合調査によれば、居住者の永住意識は回を追うごとに増えている。1980年度調査で21.7%だった「永住するつもりである」は、2003年度に43.7%、2013年度で52.4%、2018年度には62.8%に達した。かつては庭付き一戸建て住宅を上がりとする「住宅双六」の一過程と考えられてきたマンションを、生涯居住の場と考える人が6割を超えている。しかし、マンション事業に関係する主な主体であるデベロッパー、管理会社、管理組合のいずれも、居住者が人生最後の日々を過ごすことを想定したマンションづくりにほとんど取り組んでいない。2050年代には女性の平均寿命が90歳超、男性も84歳を超え、75歳以上の後期高齢者が全人口の2割以上を占めると推計されている。大都市圏で生活をしていると超高齢社会の到来をまだ実感できないが、多くの人が病院や介護施設ではなく、自宅が「終の棲家」となる時代は確実にやってくる。

 居住者が老人ホームに行かず、住みなれたマンションで最後まで楽しく快適に暮らすことを視野に入れて、ブランディング戦略を策定した管理組合がある。ブラウシア(千葉市、2005年竣工、438戸、20階建)の管理組合だ。築50年目となる2055年を目標年次に管理組合の理念、ビジョンを定め、それを敷衍した「ブラウシア・ブランディング・ブック」(BB55)を2018年3月に発行した。
 ブラウシアの管理組合は、入居当初の5期5年間にもコンサートや夏祭り等の開催、自主防災組織の立ち上げ、管理委託費の引き下げによる組合会計の収支改善、長期修繕計画と修繕積立金の見直し、防犯カメラのシステム強化等を実施した。これらの活動だけでも多くの管理組合を凌駕しているが、BB55によれば、まだマンション内部の閉鎖環境で管理組合の基礎作りをした段階である。
第6期に入りインターネット回線速度UP、理事会用ファイルサーバーの設置等のIT戦略を進めていたところで、東日本大震災(2011年)が発生した。管理会社の対応が不十分なことに危機感を抱いた管理組合は管理会社を変更、新たに選定した管理会社(レーベンコミュニティ)の協力を得て、業務改善に本格的に取り組むことになった。
 2013年にブラウシアが目指す「理念」と「ビジョン」を制定、理事会の行動指針である「ブランディング推進10ケ条」とともに管理規約の冒頭に掲げた。理事は輪番制で就任するが、管理組合の組織体制を強化するために退任した理事の一部がオブザーバーとして理事会をサポートする仕組みを確立。総計約40人に膨れ上がった理事とオブザーバーが確実に業務を遂行するため、グループに分け具体的な課題を担当することにした。

新時代の管理運営を探る㊼マンションを終の棲家とするために 築50年を目標にブランディング戦略を推進する(下)へ続く

2021/6/5 月刊マンションタイムズ

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