脱炭素に向け省エネ・創エネ推進を国が急加速(下)(有)studio harappa 代表 村島正彦
(有)studio harappa 代表 村島正彦

脱炭素に向け省エネ・創エネ推進を国が急加速(上)(有)studio harappa 代表 村島正彦 より続く

検討会がまとめた「目指すべき姿」

「取りまとめ」によると、2030年の目指すべき姿は「新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保され、新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備が導入されていること」となっている。ZEH(ネットゼロエネルギー住宅)とは、屋根に太陽光発電など載せて創エネし、その住宅で使うエネルギー量と同等を賄えられる住宅のことだ。もちろん夜間や雨天時などは創エネしないので、1年を通してエネルギー収支がゼロになればよい、同様 のビル版がZEB(ネットエネルギーゼロビル)だ。住宅の断熱性能を高めるだけではなく、創エネをしないとエネルギーゼロは達成できない。そのため新築住宅の6割に太陽光発電を載せるとした。 この6割という目標についてだが、新築戸建てへの太陽光発電の導入率はこの数年約15%、導入件数も6万~8万戸と横ばいだ。2020年の新築戸建て住宅が約33万戸なので、ハウスメーカーや地場の工務店ともにかなり努力しないと達成は困難だ。さらには、マンションや賃貸住宅を含む新築住宅全体は約82万戸であり、残る住宅への創エネも議論されるだろう。

仲介時に省エネ性能の表示や説明を

 ロードマップからは、不動産事業者にも避けて通れない役割が見て取れる。それは、2024年度からの「新築住宅の販売・賃貸時における省エネ性能表示の施行(既存については試行)」という部分だ。これは、新築住宅の販売や賃貸時に省エネ性能について消費者への説明が課せられることを意味している。実際には建設事業者からの「省エネ性能について記載した書類」が付されることになるだろう。不動産広告の「駅徒歩〇分」のような表示と共に「省エネ性能」を示すことが課され、趣旨から言えば売買や賃貸契約の際に「省エネ性能について記載した書類」を消費者に説明し手渡す業務が、従来の仲介業務に加えて必要となるだろう。

 後段の「(既存については試行)」も気になる。仲介で扱う住宅は、新築ばかりではない。既存住宅(中古住宅・新築でない賃貸住宅)も多いはずだ。これについては2022年度から「既存住宅の合理的・効率的な表示情報提供方法の検討」がなされ、2024年度から「試行」されることがロードマップから読み取れる。数年の「試行期間」を経て義務化に向かうだろう。

 つまり、将来的には、中古住宅の媒介や築古も含む賃貸住宅の省エネ性能を調査して書類を整えなければ、仲介ができない状況になるということだ。その調査は、中古住宅・賃貸住宅オーナーが費用負担して検査会社に依頼することになり、不動産事業者はオーナーのサポートをすることになるだろう。

 実は、新築・既存住宅を含めた不動産取引において省エネ性能を示す取り組みは、すでにEU諸国では行われており、取り組み時期には差があるものの主要国では義務化済みである(No.1323参照)。世界的に見れば、不動産取引における省エネ性能表示は当たり前になってきている。これからの不動産取引で、省エネ性能の情報を誤りなく伝達・共有するには、REINSのシステム改修や不動産の公正競争規約などへの「省エネ性能」の位置づけなどが必要になってこよう。 前回の寄稿で、2022年4月からスタートする制度の概要を紹介している。当面は新築住宅でも「任意」で試行されるが、この制度的な枠組みで「義務化」の流れになることが予想される。今後は、住宅消費者の「省エネ性能」への関心が高まるのは必然だ。不動産業界でも、脱炭素社会への転換を担うという気概をもって、前向きに取り組んでもらいたい。

 不動産経済Focus &Research 2021/9/29

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