人口減が実感できない要因
6月25日に発表された令和2(2020)年国勢調査の人口速報集計によると、2020年10月1日時点の日本の人口は1億2622万7000人で、2015年に比べて86万8000人減少している。一方で世帯数は2015年から227万世帯(4.2%)増加して5572万世帯となっている。そして、2015年の人口も2010年よりも96万3000人減少しており、2011・2012年頃が日本の人口のピークだったようだ。
しかし、日本の人口減少が指摘されるようになって10年以上経っても、人口減少を実感している人は比較的少ないのではないだろうか。
その理由は、人々の認知の範囲と人口減少の範囲が食い違っていることにある。日本全体で人口が減っていると言われても、自分の生活圏を中心とする自治体ではそんな話を聞かないという人が多い、というわけである。
そこで、2020年と2015年の国勢調査の結果を比較して、自治体数と居住人口数を人口増減と世帯数増減のマトリックスで分類すると下図のようになる。
東京23区や政令市の区を含む全国の1896自治体のうち人口も世帯も増加しているのは410自治体と21.6%に過ぎないが、居住人口は5573万人で44.1%と半数弱を占める。
人口は減少しているが世帯は増加している自治体は35.5%の673自治体あり、居住人口は5339万人(42.3%)と半数弱を占める。
全体でみれば、8割以上の人が居住している自治体では、世帯数が増加しており人口減少を実感しにくい構造になっていることがわかる。
新築されても空き家が増えないワケ
日本の人口は全体としては減少しているが、世帯数は増えていることから、一定の住宅の供給が必要になる。
実際、2016年から2020年の間の住宅着工数は460万戸となっている。一方、国勢調査とは2年ずれるが2018年の住宅・土地統計調査(住調)の空き家数は848万9000戸と2013年から29万3000戸しか増えていない。そのため、2015年から2020年の間の世帯数の増加数227万と460万の着工数を比べて空き家の増加数が少なすぎるという指摘もある。
しかし、正確な調査結果はないが、業界では住宅着工のおよそ半数程度は、建て替えだと言われている。都市部の住宅地を考えれば当たり前だが、新築するような更地はもはやなく、古い建物を壊して、建て替えることがほとんどになっている。
そう考えれば、5年間で460万戸の着工があっても世帯数の増加227万は約50%の比率であり整合性がある。実感できない人口減と住宅着工 麗澤大学客員教授 宗健(下)へ続く
不動産経済Focus &Reserch 2021/9/22