【2021年基準地価】①より続く
「割安な」郊外へ移動ー北海道・北広島、恵庭、江別、石狩
地方の中核都市(札幌・仙台・広島・福岡)の住宅地の地価は+4.2%(+3.6%)とさらに上昇。中核都市への人口集中および地価上昇から、周辺部の需要拡大に繋がり、周辺部の地価も上昇している。その典型が札幌市に隣接する北広島市だ。北広島は3地点が地価上昇率18.7%~19.2%と2割近い高い上昇を記録した。
北広島では札幌中心部への鉄道・道路のアクセスに優れ、豊かな自然が残っているほか、プロ野球・日本ハムファイターズの新本拠地およびその周辺を「北海道ボールパークプロジェクト」として開発の真っただ中にあり、新球場のアクセスに便利なJRの新駅建設も構想中。こうした開発による新たなまちづくりへの期待に加え、札幌市内の地価上昇を嫌気して郊外の北広島に流れ、その需要を受け止める形で住宅開発が進捗している。
ファイターズの新球場の名称は、ネーミングライツを取得した不動産デベロッパーの日本エスコンにより「エスコンフィールド北海道」の名称で開業することが決まっている。その日本エスコンは、ボールパークプロジェクトと連動した住宅開発を進めている。球場に近接するボールパークFビレッジ内で、新築分譲マンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」を開発中。新しい「ボールパークに住む」暮らしを提供して地域を活性化するまちづくりに取り組む。総戸数118戸の中型マンションに対して資料請求数は2000件を超えるなど注目度は高い。
北海道では北広島以外に恵庭市の2地点が17%前後の上昇、江別市および石狩市の地点が15%超の上昇となり、いずれも札幌市周辺のエリアの上昇が目立つ。北海道全体では人口減少が止まらないものの、県庁所在地である札幌市の人口は196万人を超え、人口増加が続く。中心部ではオフィス需要の引き合いもあり住宅地・商業地ともに地価が高止まりしていることから、利便性の高い周辺部へ住宅需要が移ってきている。
商業地地価上昇率1~4位は博多・天神の「周辺部」
地方中核都市の商業地の地価は+4.6%(+6.1%)と上昇の度合いは弱いながら引き続きの上昇となった。外国人観光客は減ったものの、国内実需層の動きはコロナ禍においても堅調であり、例えば福岡は大型再開発エリアから外れた場所の地価がとりわけ上昇した。全国の商業地の上昇率トップとなったのは、博多区綱場町9-28(博多蔵本ビル)の地点で15.8%の上昇。続いて博多区冷泉町5-32(オーシャン博多ビル)が15.1%、中央区高砂2-6-23(ストゥーディオ南天神)が15.0%、中央区舞鶴1-4-30(舞鶴パークビル)が14.7%、それぞれ上昇し、福岡が全国商業地の上昇率の1~4位を占めた。博多や天神の中心部ではそれぞれ「博多コネクテッド」「天神ビッグバン」と称される大型プロジェクトが進められており、一般的に地価の上昇はこうした再開発期待が込められる傾向にある。ただし今回の基準地価では、「博多蔵本ビル」を含めいずれも一等地とは言い難い立地。「中心部から外れたエリアの上昇が目立っている。中心部はオフィスを中心に需要が堅調で空室が少なく家賃が高止まりしている。そのため割安な周辺部に流れている」(国土交通省・地価調査課)と分析する。
仙台・広島はオフィス需要が堅調、周辺住宅地の地価は上昇
このほか仙台市では住宅地が3.6%上昇(3.7%上昇)、商業地では3.7%上昇(6.9%上昇)となった。商業地では店舗・ホテル需要は減退しており、繁華街の国分町などでは下落に転じた地点が見られた。一方でオフィス需要は堅調であるほか、東北大農学部跡地周辺で再開発が行われており、同エリア周辺の需要は強まっている。
広島市では住宅地が0.7%上昇(0.8%上昇)、商業地では1.7%上昇(2.8%上昇)。住宅地では中心部へのアクセスに優れた平坦地などで地価が上昇、市周辺でも海田町、府中町では住宅地・商業地ともに地価が上昇。商業地ではJR広島駅北口開発および駅南口の再開発が進められており同エリアの需要は強い。繁華街である八丁堀・紙屋町では店舗・ホテル需要が減退した一方でオフィス需要は堅調だ。