新リース会計、テナントやサブリース会社に影響 ―会計基準の国際対応、財務悪化や借入金利上昇の恐れ

 ビルや店舗など不動産の賃貸借を含むリース取引の会計基準変更を控え、賃貸物件を多用する小売や物流、住宅関連の企業などは対応に迫られている。主に物件のテナントやサブリース会社に影響し、財務の悪化や金融機関からの借入金利上昇、株価下落などの恐れがある。
新リース会計は、グローバル化に対応するため、会計の国際基準に日本基準を合致させる一環として行われるもの。適用対象となるのは上場企業のほか、資本金5億円以上の企業などでその数は1万社以上にも及ぶ。新基準は2027年4月から強制適用となる。
テナント企業にとっては、これまで借り物と捉えてきた賃貸物件が会計上は、「使用権資産」と呼ばれる自らの資産として評価されることとなり、借り手としての帳簿外処理(オフバランス化)が許されず、帳簿への資産計上が求められる。仮に、計上された資産の収益性が著しく低い場合には損失計上(減損処理)を迫られ、財務の悪化は避けられない。また、新たに資産を計上するために、自己資本を総資産で除する自己資本比率や、純損益を総資産で除する総資産利益率(ROA)といった財務指標の悪化が見込まれる。結果、金融機関との間の融資条件変更や、投資家/マーケットからの評価が下がり、株価の下落が懸念される。
特に影響が大きいのが全国的に多店舗展開している企業や、賃貸アパートをサブリース受託している大手アパート建築会社とみられる。対応は、まず新リース会計の資産計上に該当するか否かの「識別」作業から始まるが、大量な案件すべてについて詳細に調べ上げる必要があるため、識別だけでもかなりの時間を要する。案件によっては資産計上を回避できるケースや、激変緩和措置もあるものの、案件が多ければ多いほど、財務指標の悪化が見込まれる。実態は変わらないにもかかわらず、目に映る指標が悪く見えることに対して、求められるのは、いかにわかりやすく説明するかという上手な情報開示となる。図表で示したり、注記を記すなど、悪く見られない工夫が必要とされる。

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