国土交通省でマンションに関する施策を司っていた「マンション政策室」が7月から再編された。住宅局市街地建築課の中の一組織だったところから、同局内のひとつの独立した部署に格上げされ、社会問題化しつつあるマンションの課題に注力することになる。組織を束ねる参事官に就任した矢吹周平氏に、今後のマンション施策の方向性や、2022年度に施行される改正マンション管理適正化法・マンション建替円滑化法の主旨について聞いた。
新制度を組合の運営見直す契機に
――参事官設置の経緯と、就任の抱負について。
矢吹氏 改正マンション管理適正化法は、自治体がマンション管理適正化推進計画の策定や管理計画認定制度の認定を担うなど、新たな制度を打ち出しているのがポイントだ。参事官の役割としては、改正法の施行に向けた準備と、新制度の立ち上がりをまずは着実に進めていきたい。また改正法は自治体の理解があって初めて成り立つ制度設計なので、自治体の意見をしっかり聞き、良いコミュニケーションを取っていく。しっかりした体制を整備し、対応できるよう取り組んでいきたい。
――マンションを取り巻く環境についての認識は。
矢吹氏 建物の高経年化と居住者の高齢化による「二つの老い」への対応が重要だ。建物の高経年化については、マンションを適切に管理し長く使うことと、結果として修繕や改良が困難な状態になれば再生していくことの両輪が必要になると思っている。今回の法改正でも、管理については管理計画認定制度により管理組合に建物を長く使うことへの意識を高めたい狙いがあり、再生については要除却認定を受けられるためのメニューを増やしたり敷地分割制度を新設している。これらを一連のパッケージにし、「二つの老い」に対応していきたい。
居住者の高齢化に関する課題についても、まずは管理組合運営が適切に機能することが大事だ。そのきっかけに管理計画認定制度がなれば、と考えており、「国が新しい制度をつくったから長期修繕計画を作成しよう(見直そう)」と、組合で話し合う契機にしてほしい。自分たちのマンションが対象になる制度ができたと理解し、それをもとに管理への意識が高まっていくことを期待したい。もちろん、そのために制度の周知にも注力する。
――改正法の施行に向け、今年度の取り組みは。
矢吹氏 改正マンション管理適正化法の基本方針の作成が詰めの段階を迎えている。近く公表して自治体がマンション管理適正化推進計画を策定するための環境を整え、計画策定を下支えしたい。
また、管理計画認定制度の認定基準は示しているものの、実務として認定を担う自治体からは何をどうチェックすべきか不明な点もあるので、認定に当たってのガイドラインをまとめ今秋には示し、明確になるように取り組む。
――自治体とのコミュニケーションをどうとるか。
矢吹氏 8月には改正法や新制度などに関する自治体向け説明会を初めて開催した。オンラインで開催したところ全国から参加があり高い関心をもっていただけていると感じている。今後も認定制度の実務に関するガイドラインをまとめたタイミングなど、状況に応じ開催していきたい。説明会以外でも随時やりとりをし、改正法の内容などを知ってもらえるようにする。
自治体も規模も違えば、政策の優先度もそれぞれだ。自治体が感じている肌感覚での危機意識もあるので、そうした意識と制度のずれが生じないように意見を聞き、制度にも取り込んでいかなくてならない。
また、マンション管理適正化推進計画の策定を国として支援することも考えたい。具体的な方法は今後検討するが、自治体が計画を策定する上での材料とするための現状把握や実態調査をお手伝いすることなどが考えられるのではないか。
国土交通省・矢吹参事官インタビュー(下)認定取得を“普通のこと”に 認定受けたマンションが市場で選ばれる姿つくる へ続く
2021/9/5月刊マンションタイムズ