<NY-MARKET>RTO計画の進展がオフィス市場回復のカギ―懸念材料は変異株の感染再拡大(下)大竹グローバルキャピタルLLC 代表取締役 大竹正史
大竹正史氏

RTO計画の進展がオフィス市場回復のカギ―懸念材料は変異株の感染再拡大(上)より続く

WFHからRTOへ


 ワクチン接種率が拡大した4月以降、大手金融機関、テック企業が、「Return To Office=RTO」計画を相次いで発表した。「Zoom」等のオンライン会議システムを利用した在宅勤務が常態化、オフィス需要の先行きに懸念が拡大する中で注目された。
 金融機関では、ゴールドマンサックス(GS)、モルガンスタンレー、JPモルガン・チェイス(JPM)銀行等の大手銀行が、在宅勤務を一切認めない100%オフィス勤務ポリシー(Full Return)を発表。感染拡大防止策の再施行によりスケジュールが遅延しているが、GSは6月、JPMは9月以降、全ての従業員にオフィス勤務することを通達した。一方の従業員は感染懸念に加えて、時間的な自由度のある在宅勤務を継続する希望が強く、雇用者とギャップが生じている。従業員の希望を聞いて、段階的(Partial Return)もしくは在宅勤務とオフィス勤務を併存させる(Hybrid)RTOプランを策定する多くの企業と異なる独自のポリシーだ。優秀な従業員がこのポリシーを嫌って離職することもやむなしとの経営陣の判断だ。
 テック企業では、アマゾンが9月以降のFull Returnを従業員に通知したが、アップル、グーグル等多くの有力テック企業はHybrid型のRTOプランを発表。形態は異なるものの、共通するのはオフィス勤務をメインの就業形態の前提としている点だ。昨年、Twitter社が全社員を対象として「無期限在宅勤務(を認める)ポリシー」を発表して話題となった。だが、ワクチン接種後に自主的にオフィスに戻っている従業員もいるようだ。
 オフィス勤務をメインの就業形態として打ち出している背景には、データセキュリティの懸念もあるが、従業員相互の日常的、偶発的なコミュニケーションの重視がある。物理的に同一空間にいることのみで達成できる価値の創造、企業カルチャーの維持に対して、経営陣が強い意識を示したものだ。
 RTOプランの進展はオフィスマーケット改善の大きな鍵であるが、変異種による感染再拡大懸念は各社のRTOプランの遅延を招いている。感染拡大の懸念が現実のものとなれば、オフィスマーケットの回復は再び遠のくことになる。

投資資金アロケーションも
変化の兆し


 パンデミックによる不動産セクターの「勝ち組」と「負け組」の構図に変化の兆しが出ている。「勝ち組」は、e-commerce拡大による需要に沸く物流と、在宅勤務の流れで需要が拡大した大都市以外の賃貸住宅だ。一方の「負け組」は、ロックダウンによる打撃を受けた、ホテル、リテール、オフィスだ。機関投資家の巨額資金が「負け組」アセットから「勝ち組」アセットに移動、「勝ち組」の投資マーケットはパンデミック前を超える価格に上昇、利回りは急低下した。
 大きなトレンドに変化はないが、過熱傾向の物流や賃貸住宅から、リカバリーモードのオフィス、リテール、ホテルセクターへの資金のシフトが投資家の議題に上がっている。

2021/7/28 不動産経済Focus&Research

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