不動産の所有者責任の徹底を―人口減少時代の住宅・土地制度―大阪経済法科大学経済学部教授 米山秀隆(上)より続く
現実に即した仕組みの構築を
以上二つの仕組みをまとめると次のようなものになる。まず、住宅を建設・取得した人は、将来必要になる解体費用をデポジットしておき、建物が不要となったらそのお金で解体する。跡地は売れればそれで問題がないが、売れない場合は、放棄料の支払い(=マイナスの価格)で、国・自治体に引き渡し、公的管理下に置く。
右肩上がりの成長、人口増加の時代においては、不動産価値は上昇を続け、次に取得したい人が出てくる可能性が高かったため、最後の解体の問題を考えておく必要はなかった。しかし、人口減少時代においては、次に取得したい人が出てくる可能性が低くなっており、最初に取得した人が最後の解体やその後の土地管理の問題をも考えなければならなくなっている現実を直視した仕組みである。
この仕組みでは、今後、住宅を建設・取得するには、最後に必要になる解体費用をデポジットできる負担能力があり、さらに、跡地が売れず処分する場合においては、固定資産税や管理費用相当の何年分かを支払える人でなければならないということになる。住宅を建設・取得する場合は、単なる購入費用だけで済まないということで、所有者責任の徹底を求めるものである。
もし、ここまでの所有者責任が求められることになれば、将来的には、もはや取得することは得ではなく、必要な時に利用できるだけで十分という、所有優先から利用優先の考え方への変化を促すことになるかもしれない。
先の国会においては、所有者不明の土地解消に向け、相続登記義務化などの法改正が行われた。義務化以上に注目すべきは、新法により、相続で取得した土地を手放し、国庫に帰属させることを認める制度が新設されたことである。ただし、土地に建物がない、管理にコストがかかり過ぎないなどの厳しい条件を満たした上、10年分の管理費を支払う必要がある。この仕組みを使える人は、現状では極めて限られる。しかし、将来的には条件を緩和し、国が積極的に引き取らなければならない時代に入っていく可能性があり、筆者が提案するような仕組みへの突破口になっていくかもしれない。
2021/7/14 不動産経済Focus&Research