ブラックストーン・グループ不動産部門日本代表の橘田大輔氏が本紙(日刊不動産経済通信)の単独取材に応じ、日本の不動産市場について「コロナ禍で取引が減った時期は過ぎ、多くの投資家がポストコロナを見据えて積極投資する段階に入った」との認識を語った。橘田氏は「不動産の売り物がかつてないほど多い」と指摘。昨年、自社で3000億円規模の大型投資も手掛けたレジデンスの安定性を高く評価し、レジのほか物流施設や製薬系オフィスなどに重点投資する方針を表明した。
オフィス市場について「好立地物件への投資需要は相変わらず強い。(都市部の)空室率は上がるが需要は徐々に戻る」と予想。特に製薬などライフサイエンス系の事業拠点に伸びしろがあるとした。日本では製薬会社が事業や研究に必要な拠点を自前で持つことが多く、投資市場が未整備だった。その分、これから市場が形成されるポテンシャルが高いとの読みだ。東京では日本橋に製薬関連の事業所が集まりつつある。
レジデンスについては「物流施設以上に安定している。さらに投資を増やす」と明言。かつては管理の煩雑さや日本に大規模な物件が少ないことなどを理由に海外投資家から敬遠されがちだったが、「現地の企業と組んでバルク買いする流れができた」という。レジ同様、安定性が評価される物流施設には「引き続き資金流入が続く」とした一方、データセンターは「間違いなく成長するが、電源やテナントの確保、立地選定など開発の難易度が比較的高く、物流施設のようにはいかない」と見解を語った。
コロナ禍で大きな打撃を受けたホテルは「戻りがみえた。逆張りの観点で面白いアセットだ」と指摘。同じく客足が減った商業施設は「キャッシュフローが意外と安定していてイールドギャップもやや大きく、投資資金が再び戻ってくるのではないか」と評価した。
日本の不動産市場のリスクについて、日本特有のリスクはないとした上で「この先、米国が金融緩和を縮小すれば米経済が一気に冷え、世界経済に波及する」と外的要因を挙げた。さらに「米国と中国の対立が深まり、その余波で中国の素材輸出が規制されれば日本の製造業に打撃となる。日本国内で需要に供給が追い付かなくなり実態経済が悪化すれば、商業やホテル、レジなどに悪い影響が出る」と懸念を語った。
それでも海外の機関投資家らが日本市場を重視する理由について「インドや中国のように大きくは儲からないが、政治や為替が安定していて落ちるリスクも小さい」と分析。人口は減っても福岡を含む四大都市圏の経済規模は世界的にみて大きく、都市の成長性を見極めた上で投資する流れは絶えないと展望した。 (日刊不動産経済通信) ※16日からオンライン公開の「第111回不動産経営者講座」でより詳しい内容をお聞きになれます。