「賃料、夢払い」とは?都心オフィス利用1年無料企画に、スタートアップ10数社が応募。今後のオフィスでの働き方はどうなるか?(上)
小田修平・サンフロンティア不動産 執行役員

コロナ禍で「仕事をする場」としてのオフィスのあり方が問われる中、東京都心のオフィスビルが1年間無料で借りられます、という不動産会社のキャンペーンが注目を集めている。「賃料、夢払い。」というネーミングで、入居審査をパスした企業に東日本橋のビルへ1年間無料で入居できるというもの。応募は7月末で締め切られた。告知・情報提供はネットで行い、AIによる映像制作会社をはじめとする新進気鋭のベンチャーなど10数社から応募があった。仕掛人の小田修平(おだ・しゅうへい)・サンフロンティア不動産 執行役員リプランニング事業部長に取り組みの狙いと、フレキシブルスペースや今後の働き方のあり方について考えを聞いた。

―今回の企画で入居できるビルの概要について

小田氏 当社がオフィスビルのリプランニング®(不動産再生)を手掛けた、東京・東日本橋に所在する10階建てのフレキシブルオフィスが「LIT」。当社はこれまで東京都心の不動産再生事業において延べ420棟超の実績を有し、入居企業様の目線に立った「セットアップオフィス」を提供している。その最新世代の一つのオフィスビルが2021年6月1日にオープンした。1階にはオフィスとは思えないようなレセプションとラウンジ、会議室、テレカンブースを備えた共用施設を設け、2階から9階がオフィスフロア、10階とルーフトップガーデンは、The Hangout by illiという時間貸しの特別な空間が広がっているオフィスビルだ。

ーセットアップオフィスのこれまでの実績について

小田氏 2014年頃からセットアップオフィスの提供を開始し、都内で700室超のセットアップオフィスを手掛けてきた。スタートのきっかけは、リーマン・ショックの直後に、テナントの撤退が数多く発生し、最新鋭のビルに入居し豪華な内装を設えていた企業が、まだ使われて間もない美しいままの内装を壊して原状回復することが必要となった。費用も時間も労力もかかり、この無駄を解消させるべく、居抜き店舗仲介のオフィス版として、ポータルサイト「そのまんまオフィス」を立ち上げた。移転費用を最小限に抑え、すぐに入居できるオフィスを探しているテナントのニーズは非常に高く、逆に居抜きビルの供給が追い付かない事態になった。それならば自分たちで居抜きビルを作ろうと発想し、オーナーサイドで内装工事を施して貸し出すというビジネスモデルが生まれ、セットアップオフィスと命名した。ビルオーナー様も、セットアップすることで賃料を高く設定できることや、テナント視点でのオフィス設計により入居が早く決まることが多く付加価値ポイントとなる。原状回復も不要なことから、まだまだ使えるものを壊すことなく使い続けることで、産業廃棄物の発生を最小限に抑えることができ、環境にも優しいオフィスとなる。 

ー事業の状況について

小田氏 年間30棟から40棟のリプランニングを手掛けており、1つのビルでおおよそ4、5フロアをセットアップオフィスとして供給するため、年間200室程度となる。 あと数年で1000室体制になり、現在はセットアップオフィスの仕様や概念といった部分はどんどん進化していて、社内では「第4世代」と呼んでいるセットアップオフィスが主流となっている。ここLITはその次の「第5世代」という位置付けとなる取り組みだ。 

ーその第4世代と第5世代の違いは

小田氏 第4世代はパブリックエリアのみをセットアップし、執務室側は壁や一部の内装を施し、デスクなどはテナント企業側で自由に設えていただくスタイル。第4世代まではこれまでの不動産の延長線上でのセットアップオフィスの位置づけとなる。第5世代からは什器や備品等を用意した上で、不動産ではなく施設として運営に乗り出した。フレキシブルオフィスとして、賃貸借契約ではなく、施設利用契約という形で、オールインクルーシブ型の料金形態で提供している。

ーフレキシブルオフィスの魅力は何か

小田氏 通常の賃貸借契約では2年契約が一般的だが、フレキシブルオフィスはマンスリー契約がほとんどだ。そして賃貸借契約では敷金や什器・備品の費用、保証金などが別途発生するため、実際に掛かるコストは賃料の1.6倍ぐらいになる。一方、フレキシブルオフィスは1プライスだ。さらには、常駐するコミュニティマネージャーが掃除やコーヒーの提供などを通じ、施設の中のネットワーキングを推進する。電気代、複合機使用料、紙代なども含め、すべてが施設利用料に含まれている。当社の提供するオフィスのテーマは「入居テナントの成長が加速するオフィス」。企業の成長に合わせて当社が提供するオフィスの中で移転し、どんどん拡大してもらえればとてもありがたい。

「賃料、夢払い」とは?都心オフィス利用1年無料企画に、スタートアップ10数社が応募。今後のオフィスでの働き方はどうなるか?(下)へ続く

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