(提供:日刊不動産経済通信)
◎コロナ禍がインドの住宅市場を需要喚起ームンバイとプネで現地企業の事業に参画/丸紅海外不動産事業部長 宮口典丈氏
―インドの経済と不動産市場をどうみているか。
宮口氏 人口の著しい増加に加え、GDPも上がっており、誰もが中国の次はインドと口をそろえるほど期待される市場だ。新型コロナウイルス禍で住環境に対する意識が高まり、中間層の住宅需要の喚起につながった。そのなかで金利が下がり、需要が堅調に推移してきた。この流れは当面変わらないとみている。まだ成長途上という側面もあり、ネガティブイベントが起きると一旦は低迷するが、需要自体はあるので一定期間が経つと回復し成長する。ベースが成長しているので、ネガティブイベントなどで少し上下することはあっても、全体でみると成長に向かっている。住宅ローン金利はコロナ禍前は9%程度で、コロナ禍で一旦6%ぐらいまで下がり、足元ではまた9%ぐらいまで上昇している。市況は堅調に推移し、現地のパートナー企業も強気でみている。日系の不動産会社はまだあまりインドへ参入しておらず、チャンスはある。
丸紅 海外不動産事業部 宮口典丈部長
―インドでの分譲住宅事業について。
宮口氏 20年にマハーラーシュトラ州ムンバイ市郊外で、現地企業のワドワ・グループ・ホールディングスらが開発する分譲マンション事業に参画した。47階建て3棟で約800戸。今年2棟竣工し、来年1棟完成する予定だ。間取りは2LDKと3LDK。アッパーミドル層がターゲットで、2LDKは単身者や夫婦、3LDKはファミリー層を想定している。価格は平均坪単価が100万~120万円あたり。すでに約8割が成約済みで、当初予定より好調に進捗している。一次取得者層に2LDKが人気だ。他の日系企業がデリーで参画した分譲マンション事業も販売が好調だったと聞くので、住宅市場の好調はおそらく全都市での傾向だと思う。第2弾としてマハーラーシュトラ州プネ市で現地企業コルテパティル・デベロッパーズが開発する事業に参画している。34階建て3棟・約340戸の計画で、先日着工した。プネは平地で土地が広がっているので、販売単価を安く、住戸の専有面積を広くしやすいのが特徴だ。
―インドの分譲マンション市場の特徴は。
宮口氏 日本のように決まった販売会社に販売をすべて依頼するのではなく、各エージェントが顧客を連れてきて販売する。交渉文化なので販売価格が変わる。隣接する住戸で価格が異なるケースも多く、物件全体で価格を調整している。購入検討者はマンションが予定通り完成するかのリスクに関して敏感で、信用のないデベロッパーの分譲物件だと着工しても反響が鈍く価格を下げて販売することが多い。物件が竣工すればそのリスクはなくなるので価格が上がる。信用のあるデベロッパーだとその影響は小さくなる。ムンバイの物件では当初1500万円ぐらいだったのが完成間近で2800万円に上昇したケースもあった。
―インドでの今後の戦略について。
宮口氏 マハーラーシュトラ州の二大都市で知見のある現地の優良企業と組めたので、2社の次のパイプラインに参画するのを軸に展開していく。そのほかの大都市でもチャンスがあれば現地の優良企業とJVを前提に検討していきたい。