空前の売り手市場、低金利も後押しー リアルター・ニューヨーク州公認不動産取引士 滝田佳功
リアルター・NY不動産取引士 滝田佳功

日常が動き出したNY


 6月でロックダウン終了から1年が過ぎたニューヨークでは先月からコロナ対策のための規制の大半が撤廃された。レストランは通常通りの100%キャパシティで営業再開、ミュージカルや映画館などのエンターテイメントも再オープン、バスや地下鉄も通常ダイヤで運行されはじめた。街中はコロナ過による営業規制に対応できずに廃業してしまった店舗も目立つが、朝夕のラッシュアワーも復活しマンハッタンも徐々に活気が戻っているように見える。


飛行機を含む公共交通機関ではまだマスク着用が義務づけられてはいるものの、国内線利用時のPCR検査はなく搭乗できるので、空での移動は元に戻っている。6月20日からはリアルターのカンファレンスがリモートではなくフロリダで行われているなど、大型のカンファレンスや展示会なども徐々に開催が再開されはじめている。9月からは大学や小中学校も通常通りスタートする予定だ。 

NY近郊で購入ラッシュ発生


 昨年6月のロックダウン終了と同時に押さえつけられていた需要が不動産市場に一斉に流れ出した。ロックダウン終了後のトレンドとして次の5点が挙げられる。


1.リモートワークで通勤する人が減った。通勤がなくなったので多少職場から離れていても気にしない人が増え郊外の安価で広さがある物件の需要が増えた。また、ホームオフィスとして使える部屋がある家を求める人が増えた。 
2.都心の狭いアパート生活より郊外の広々とした部屋数が多い庭付きの家など、リモート授業が受けられる環境、リモートワークのきる環境を重視する。
3.住宅ローン金利は下がり続け今年2月に市場最低を記録したため、低金利を利用して住宅を買い求める人が増えた。 
4.郵便局への住所変更依頼は、去年1年間でニューヨーク市内から郊外へ33万3000件あった。また携帯電話の位置をアナライズするUNACAST社の統計によると、市内から郊外への位置変更の記録が137万件と、都心から郊外への人口移動は明らかで、ニューヨーク近郊の住宅購入ラッシュが続いている。
5.住宅購入ラッシュで在庫不足が発生しており、販売希望価格以上の金額で購入する人が多く、不動産価格の上昇が止まらない。

住宅ローンは今年2月に
2.7%と記録的な低さに

 この住宅購入ラッシュで住宅の在庫日数が2カ月前後という驚異的な在庫不足となり、極度な売り手市場となっている。週末にオープンハウスを行うと100名くらいの長蛇の列ができる。購入申し込みも平均4~5件が入り、提示以上の価格で売れることも珍しくない。統計では5件に1件は販売希望価格よりも高い金額の購入申し込みオファーが入り、その金額が数万ドルを超える場合もあると言われている。

 業者は売りたくても物件在庫がない、買い手も買いたくても買うものがないというのが現状だ。また新築物件も需要に追い付いていない。建材の値上がりが目立ってきていて、ある記事では建材の値上がりで新築住宅の平均価格は3万ドル上昇したと言われている。極端な売り手市場となり、売り主は嬉しい限りだが、買い手は気に入った物件を買いたくてもセリで勝てない状況だ。 
 不動産購入トレンドの変化と住宅ローンの低金利化、在庫不足から発生した価格上昇で、全米主要都市の平均住宅価格は前年比約10%上昇している。 

価格の急激な上昇と金利の回復で市場停滞の恐れも

 現在、コロナ・ワクチンの接種率は全米平均で約45%、ニューヨーク州50%程度、ニューヨーク市内だと70%弱と言われている。下半期にワクチン接種者が過半数を超え集団免疫が獲得されれば、コロナによる自粛が完全に取り除かれる。今まで売買を躊躇していた人々が動き出すだろう。物件をマーケットに出す人が増えれば、売り物件を待っていた人が動き出す。だが、このまま住宅価格が上昇すれば、一般の人には購入できない価格帯となり、購入ラッシュにブレーキがかかる。

 住宅金利は、雇用がコロナ前のレベルまで回復し、GDP成長率が2%を維持もしくは上回れば金利が上がりだす可能性がある。そうなれば購入ラッシュにブレーキがかかるので、今後はバランスが重要になってくる。今年の11月には恒例のNARの世界大会がカリフォルニア州の南部サンディエゴで開催される予定だ。それまでに海外からの渡航規制が撤廃されることを期待している。例年は2万人規模、海外からも1500名程度が参加しており、今回はオンラインによるリモート参加も可能なので、より多くの参加者を期待している。 

2021/6/23 不動産経済Focus&Research

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