―オープンハウスと東京圏で供給拡大も
―近畿圏の事業環境はどうか。
土井氏 ファミリー向けも単身者向けも需要が強いが、特にワンルームマンションは過去にない売れ行きだ。販売する物件が足りず、数カ月先に引き渡す予定のものも売らざるを得ないような状況だが、その売り方は契約解除のリスクも高まる。今は中古物件を多めに仕入れることで先売りを控えるようにしている。
―コロナ禍が仕入れにどう影響している。
土井氏 かつては相対取引の用地情報が多く寄せられたが、コロナ禍以降は土地の価格がさらに上がり、入札になることが増えた。ホテルや商業施設を手掛けていたデベロッパーが住宅に軸足を移したせいもあり、競争が過熱している。外資のファンドが日本のレジを買うようになったことで応札額が吊り上がる傾向もある。大阪では北、中央、福島など中心区の仕入れが難化し、西区の端や浪速区、城東区などといった市街地の周辺部に目を向けざるを得なくなっている。
―東京では郊外の人気が上がった。大阪はどうか。
土井氏 大阪で郊外といえば神戸の山間部や和歌山などを指すことが多いが、大阪の消費者がそうした地域の住宅を買う動きが強まっていることはない。ただ大阪の中心部まで電車で15分程度で出られる東大阪など周辺部の人気は高まっている。
―近畿・中京両圏が事業の主軸だ。エリア戦略を。
土井氏 近畿と中京の事業比率は概ね65対30ほどであり、残りは九州や沖縄などだ。(親会社の)オープンハウスと連携しながら、販売単価が高い東京圏での供給割合を全体の15%程度に高めたい。近畿と中京で現状を維持しつつ東京で実績を重ね、広島や九州、沖縄などの地域でも安定的に供給していく。
―マンション市場の短期、中期の見通しを。
土井氏 土地代や工事費が高く、原料価格の高騰も来春あたりの工事見積もりに反映されてきそうだ。それでも日本の不動産は他のアジア諸国に比べて安く、大都市中心部ならそれなりに需要がある。大都市から離れるほど原価などの上昇分を販売価格に転嫁しにくくなる。需要がある都市圏でどう勝ち抜くかだ。
―関西には万博のほかIR誘致の構想もある。
土井氏 コロナ禍で、消費者の頭からそれら2つへの期待感は薄まった。計画が具体化して再び開発が動き出せば消費者心理も盛り上がるかもしれない。
―オープンハウスとの協業体制ができてきた。
土井氏 オープンハウスは大阪市中心部で戸建て用地の仕入れを始めている。市街地周辺部が主体の当社と住み分けながら相乗効果を出していく。東京ではオープンハウスの情報網を生かしてワンルームの供給を増やす。私募リートのAM会社も共同で作り、そこに組み入れる物件を当社からも供給している。
―マンション事業のリスクをどう考える。
土井氏 販売価格の上昇に消費者が付いてこられなくなることを懸念している。インフレの兆しもある。物価上昇への対応を考え仕入れに反映させていく。
―競合他社とどう差別化し、勝ち抜いていくか。
土井氏 自社で建てて自社で売り切るやり方で営業力を磨いてきた。業界にはIT活用で営業コストを削る流れがあるが当社はその逆を行く。地道な外回り営業を引き続き重視し、人材採用や教育に投資する。特に関西は足を運んで築いた人間関係が生きる場所だ。実際に当社の営業力が評価され、他社物件の販売代理を請け負う機会も増えている。(日刊不動産経済通信)