中国リート市場に高まる期待―公募リート始動で新たな投資機会創出(上)より続く
中国のリート市場に目が注がれている。約12兆元(約188兆円)ともいわれる潜在的なリート市場規模を有する中国において、現在の私募ベースである「類リート」に加えて、公募リート市場が正式にスタートしたことで、新たな投資機会が生まれようとしている。コロナ禍で動き出す市場の足元と今後の可能性などを見る。
「類リート」では新型コロナ対策型も登場
APREAは現地法人設立、専任者配置し対応
足元では中国類リートの発行規模は減速する傾向にあるものの、商業、オフィス、賃貸住宅などの需要は堅調に推移している。中国湖北省・武漢市では、2020年1月に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で約2カ月間封鎖され、経済活動も一時停滞。武漢の経済再生は中国の最も重要な任務の1つとなり、全国から注目されている。その一環として、2020年12月11日、新型コロナ対策型類リート「申万宏源―電建南国疫後重振(コロナ後の経済再生を意味する)資産支持専項計画」が正式に創設された。オリジネーターは武漢・南国置業コーポレーション。発行総額は18.1億元(約290億円)、投資期間は5年間、優先級A証券の平均確定分配率は4.8%。対象不動産は商業、オフィスを中心とした総合型施設で、施設内に伝統文化、芸術、グルメなどのすべてを揃えた地元では人気のスポットだ。募集された資金は、店舗の家賃減免、中小事業者や個人事業主への支援策に使用するという。失業防止の一翼を担うとともに、武漢の経済再生、活気の取戻しに期待されている。
同時に、新型コロナ感染拡大の影響により、日本や諸外国と同様に、物流倉庫に注目が集まっている。中国では数年前から食料品のネット通販が普及しており、新型コロナウイルスの影響で利用者が更に急増。特に生鮮食品や冷凍食品に欠かせない高品質なコールドチェーンサービスが好調だ。一方、インフラ公募リートは法制度の不整備、情報公開、安定的な運営維持などまだ多くの課題を抱えているが、インフラなどの長期的な国家プロジェクトに参入でき、安定した収入を得られるのが個人投資家にとっては大きな魅力だ。
2020年後半から、中国では新型コロナ感染拡大が収束し、経済活動も正常に向かい、個人消費が盛り上がるなど、人々の日常生活が戻りつつある。2021年、中国類リート市場では、商業、オフィスなどといったセクターにおいて引き続き成長が見込まれている。
S&Pグローバルによると、上場が見込まれているインフラ公募リートの初回の発行規模は、約50~100億ドル(約5000億~1兆円)になるが、10年後の累計発行総額は300~735億ドル(約3.1~7.6兆円)に達する見通しという。
経済発展の方針を示す第14次5カ年計画においては、不動産投資信託基金を推進すると明言する海南省に注目が集まっている。海南省は2020年6月に自由貿易港を建設すると発表し、関税・所得税など優遇措置の実施だけでなく、証券投資など金融分野における外資参入規制も緩和されている。APREA(アジア太平洋不動産協会)も中国リートに注目し、すでに現地法人を設立し専任者を配置。アドバイザリー委員会を組織して、政府のガイドライン案に対する意見交換に参加するなどして、その立ち上げを後押ししている。公募リートがいよいよ本格始動し、海外の投資家にとって新たなビジネスチャンスが広がる可能性が生まれている。
2021/4/15 不動産経済ファンドレビュー