東海道リート投資法人が6月22日、東証リート市場に上場した。リートの上場は1年半ぶり。地域色の強いスポンサー構成により、静岡・愛知・三重が中心のエリアに特化し、地域と支え合いながら3~5年で資産規模1000億円への成長を目標とする。資産運用会社の東海道リート・マネジメントの江川洋一社長に運用方針などを聞いた。
―上場の狙いは。
江川氏 リートの上場は、スポンサーであるヨシコンと静岡銀行の間で数年前から構想を温めており、私は静岡銀行出身で2年前からプロジェクトに携わってきた。本投資法人は、静岡県を核として、愛知県、三重県の産業地域を中心に、広く旧東海道周辺のエリアへ投資する。これらの地域は、産業も人口も集積している一方で不動産証券化の分野がまだ本格的に進んでいないエリアも多い。静岡県を核とする産業地域が魅力的な地域であることを踏まえ、検討の初期段階から、地域の金融機関や個人投資家など地域の人々に広く支えられ、地域に大きな利益を還元することが可能な上場リートを選択した。地域に根付いたリート事業の定着に向けて、その地域を引っ張る強力なスポンサーサポート群と行政とも連携して、ポテンシャルを引き出していきたい。現在の東証リート市場は投資口価格が上昇している市況の中で、6%台という利回りの高さは魅力となるため、投資家にメリットのある金融商品が提供できたと考えている。
―成長戦略は。
江川氏 重点投資エリアとなる静岡県、愛知県、三重県の3県で全体の60%以上の投資を行い、東京、大阪を含む東海道地域へ全体の90%以上の投資を行う。上場時のポートフォリオは、物流施設を始めとした「産業インフラアセット」を3割と、住居系や底地など「生活インフラアセット」を7割の割合で保有し、中長期的にそれぞれ5割程度とすることを目安とする。外部成長イメージは早期に資産規模500億円、3~5年で1000億円規模への成長を目標イメージに描く。地場である静岡県を中心とするヨシコンの企画力を武器にした開発物件の取得を中心として、第三者から取得する場合も地場のリートならではの強みを生かした方法で展開していきたい。上場時の巡航LTVは45%程度を想定しているが、早期に公募増資を行い、外部成長の実現とLTV水準の低減を実現する考えだ。スポンサーとして、静岡県で知名度の高いヨシコン、中部電力ミライズ、木内建設、静岡ガス、静岡銀行、静岡不動産、鈴与、清和海運、日本国土開発の合計9社が、各社の得意とする分野で手厚いサポートを行う。メインスポンサーのヨシコンは、物流施設を中心に産業インフラアセットの開発を多く計画している。敷地面積5万坪の「袋井プロジェクト」を始め開発物件を確実に取り込み、安定的な成長につなげていきたい。
―ポートフォリオについて。
江川氏 上場時の8物件では、底地アセット「浜松プラザ(底地)」と物流アセット「いなべロジスティクスセンター」で資産の約6割となるが、両物件ともに安定性が高い資産とみている。「浜松プラザ」は大部分が底地で収益は安定していて、メインテナントのコストコは、巣ごもり需要などでコロナ禍でも好調な売上と聞いている。「いなべロジスティクスセンター」は、テナントとの賃貸借契約が当初の契約時から段階的に増床を続けてグループで1棟貸しとなり、長期的な関係性を築くことを重視している物件だ。今後の取得物件は、産業インフラアセットを中心として、将来的には工場の底地などの組み入れも検討していく。(日刊不動産経済通信)