シリーズ;空き家活用新時代④ 空き家バンク利用者数はコロナ前比で1.6倍にーLIFULL地方創生・田中百氏(上)
LIFULL・田中百(たなか・もも)氏

空き家対策特別措置法がスタートして5年が経過し民間でも様々な空き家関連ビジネスが誕生している。そこで最前線に立つプレーヤーの声を聞いた。全国版空き家バンクの運営や地域交流拠点などを展開する、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S (ライフル ホームズ)」を運営する、LIFULL(ライフル)・地方創生推進部の田中百(たなか・もも)氏に、空き家バンクの運営状況や、地方自治体の取組み姿勢などについて聞いた。

―LIFULLの地方創生推進事業とは

田中氏 地方創生推進部に所属している。取り組みの全体像としては、地域の課題を解決する。地域課題の解消の中で空き家も活用して地域の魅力に変える、というものを目指している。国土交通省の空き家活用モデル支援事業として、「全国版空き家バンク」を2017年に開設した。LIFULLの地方創生事業のうち、柱となるのがこの「空き家バンク全国版」で、地域課題解決の舞台としてこの空き家バンクを使っていただいている。空き家バンクは3年が経過しマッチングも増えてきた。このほか資金調達支援や活用プロデュース、人材育成と地域と都市部のマッチング事業などを行っている。

―マネタイズはどうなっているのか

 田中氏 全国版空き家バンクは、事業開始当初から、自治体からも利用者からもフィーは得ていない。LIFULLの事業としては、人材の育成とマッチング事業、実際の物件を活用した空き家の活用プロデュース、自治体と連携して空き家の課題解決のコンサルティング業務、地方と都市の結びつけのためのプロジェクトなどだ。空き家バンクのサイト単独では無料で利用可能で、単独ではマネタイズしてないが、利用している自治体のサポートなどで事業を行えている。自治体向けに空き家相談員の育成支援などを行っている。

―具体的な人材育成の中身について 

 田中氏 空き家バンクに情報を載せるための情報集めは、自治体職員には荷が重い。スキルがない。自治体は空き家の相談を、所有者や利用希望者から受けたりする。その際に活用するためのノウハウとか、地域の空き家問題解決のための人材の育成事業を19年からやっている。これが相談員育成事業。具体的には講座は基礎講座と発展形となるビジネス活用講座とがある。自治体職員が相談受けたりすることに対する基礎知識を得ることは基礎講座、それ以上に空き家を活用して地域で新ビジネスの創出を支援したいニーズがあり、こういった方向けにビジネス活用講座をやっている。空き家の管理代行とか、空き家の荷物整理とか、まちづくりとかで、空き家を軸にした地域でのビジネス創出みたいなところだ。 

―空き家を軸にした地域ビジネスとは

 田中氏 一例として国内17カ所で展開中のLivingAnywhere Commons(LAC)がある。大規模な遊休施設を活用したシェアオフィスみたいなもので、ワーケーション需要にも対応している施設もある。その一環として、「テレワーク拠点開設準備スクール」もやっている。自治体は使わなくなった学校とか図書館などの施設を活用するに当たり、我々が支援をする。自治体が廃校などを交流拠点などに再生して関係人口を呼び込んでいく、そういった拠点に変えていくための学びの場として、拠点開発スクールを展開している。小規模な施設であれば、宿泊施設「LIFULL STAY」として当社が購入したり、借りたりして民泊施設に転用し運営なども行っている。LACではリモートワークや二拠点居住で、都市で仕事しているけど身体は地方、という活用シーンを想定し、400泊/月(全拠点)を達成したことがある。それ以外に5月から地方移住のためのwebメディア「LOCAL MATCH(ローカルマッチ)」を開設した。地方の仕事と求人情報、イベント情報、お試し移住住宅情報を発信しており、都市にいながら地域とも関わりを持つことができるためのメディアだ。

―空き家バンクの実績は

田中氏 今は675自治体(5月末時点)に参画していただいている。掲載件数は時期によって違うが常に5500から6000件のあたりを推移している。マッチングの実績については公表していない。

―コロナの影響は?

田中氏 2020年に緊急事態宣言が出ていたときに、その期間の以前との比較でユーザー数は1.6倍に増えた。参画自治体増えたことによって、ユーザー数も増えているのだが、コロナをきっかけに地方へ目を向ける人が増えたのかなと、感覚的には思っている。一方で自治体はコロナ対策で、空き家部門のスタッフが減らされたり、物件調査にいくのが減って掲載物件数が減ったりした。それでも去年12月には元の水準に戻っている。自治体側にヒアリングをすると、この1年で問い合わせ増えた、と回答いただいた自治体も幾つか聞いている。

―空き家バンクの利用者は若い人が多い

田中氏 利用者の年代は25歳から44歳までが約半数。空き家バンクの掲載物件は価格が安いイメージがあるからだろう。地方へ移住する人は、都市圏の仕事をやめていくのが主流のため、なるべく家を安く手に入れたいというニーズがあるのかなと思っている。これまではリタイヤ直前の人の移住というケースが多かったが近年はライフスタイルを自然にしたいという、30代・子持ちのような人が増えているのではないか。 

―自治体との連携については

田中氏 まずは空き家の相談窓口の支援、自治体の窓口の運営支援、それ以外に地域の関係人口創出だ。こうした流れの中で空き家が活用されていく、そうしたところを支援していく。当社は複数の自治体と地域活性化連携協定を結んでいる。LACも展開している下田市や猪苗代町や、佐渡市や田川市など。連携協定を結んでいるのは12自治体ある。

シリーズ;空き家活用新時代④ 空き家バンク利用者数はコロナ前比で1.6倍にーLIFULL地方創生・田中百氏(下)へ続く

 

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