将来的な業界のイメージを視野に
新商品や生産性を高める手法を編み出す
マンション管理の未来 ㊾三菱地所コミュニティ・駒田久社長(上)より続く
総合管理の他に部分管理が連続的に広がる将来
――DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは。
駒田氏 MJCBOX、スマート理事会やペーパーレス化などデジタルに対応した商品や社内の仕組みづくりに取り組んでいる。スマート理事会は、相対でなくても時間と場所を選ばず理事会を機能せるツールとして送り出したが、管理組合は遠隔地で同じ時間を共有して対話するオンライン会議のような仕組みも好まれていることが分かったので、遠隔地で同じ時間で実施するサービスも検討しているところだ。
人手不足の中で業務を省力化するためにもデジタルの力を借りることは業界にとって不可避だ。しかし、お客様はおそらく業界が考えているようなデジタル化した管理を必ずしも歓迎していないという認識も持っている。DXが目指すような、デジタル化によって多くの人の暮らしが豊かになるという話とお客様の思い描くサービスとの接点が描き切れていないことに課題を感じている。管理会社の独りよがりの合理化にならないよう、ギャップをどう埋めていくか探っていきたい。
――管理業界の見通しは。
駒田氏 管理組合の財政的な負担能力と人件費の高騰を考えると、今までのサービスを管理組合の要望通りに安価で提供し続けるということは難しくなるだろう。その先に何があるのか。現在は管理サービスを管理会社が全て担うという「総合管理」が主流であり、管理組合が管理業務の全てを担う「自主管理」を選ぶ管理組合もある。これからは総合管理か
自主管理かではなく、その中間的な管理形態(部分管理)が、多く出現するのではないかと見ている。
総合管理であればこれだけの対価をいただかないと提供できないという場面に直面した時に、管理組合が自分たちでやれることをやらないといけないという動きが出てくるのではないか。そこでどの業務をどこに任せ、どの業務を管理組合自身が担うのかという議論が出てくる。そこに当社としてしっかりとした商品やサービスを提供できるかを意識していきたいと考えている。将来的な業界のイメージを視野に入れながら、事業として落とし込んでいけるように取り組んでいきたい。
管理のメニューが増え、異業種が参入したり、自主管理アプリのようなツールを使った管理に取り組む管理組合が登場する中で、管理会社が管理のノウハウを提供することで競争力を高めていくという将来像を描いている。その中で当社としては提案する力、つまりコンサルティング力が強みになっていくと考えている。会計や総会運営、建物のメンテナンスについて、三菱地所コミュニティに聞けばソリューションがあるという立ち位置を目指していきたい。
――政策要望は。
駒田氏 管理適正評価制度に取り組む管理組合へのインセンティブを国で検討してもらいたい。あとは、マンションの資産価値を維持するためのファイナンスの制度の強化だ。お金をかけないといけないにも関わらずかけられない、その結果、対策を講じることができなかったということになってしまう建物の安全性が保てないだけでなく、社会的損失にもなる。ファイナンスでうまくつないで乗り越えていく必要があるので、使い勝手のよい仕組みを提供していくことが重要になる。
(プロフィール)
駒田 久(こまだ・ひさし)氏
1959年6月12日生まれ。1984年3月一橋大学法学部卒業後、同年4月三菱地所株式会社入社。2006年総務部法務室長、2012年4月法務・コンプライアンス部長、2014年4月執行役員東北支店長、2017年4月執行役常務住宅業務企画部担当などを経て、2019年4月グループ執行役員・三菱地所コミュニティホールディングス株式会社代表取締役・三菱地所コミュニティ株式会社代表取締役社長執行役員(現任)。
2021/6/5 月刊マンションタイムズ