安定性と安心感で高まる評価―底地に注目するそれぞれの理由(上)より続く
底地投資が注目を集めている。コロナ・ショックに見舞われた1年、不動産投資市場では、底堅さを示したアセットで物件価格の上昇とキャップレートの圧縮が起こる一方、コロナ感染対策が運営に影響を及ぼしたアセットは、賃料の減額要請が出るなど、マーケットのボラティリティーが表面化した。そこで注目を浴びているのが、底地事業への投資。底地は、土地のみを対象に事業を展開するため、建物やテナントに発生する不測の事象に左右されにくい。底地事業の足元と今後の見通しを探った。
旧法借地は登記義務化が追い風 理解広がれば市場規模はさらなる拡大へ
一方、全国に存在する借地は、2018年の住宅・土地統計調査によると87万世帯。そのうち、旧法が適用される底地は多い。これらは、依然として流動性や担保価値が低く自由な土地使用が制限された状態だ。また、当初の賃貸借契約から年数が経過し、地主と借地人の関係性が希薄化。地主、借地人双方が高齢化している例も多く、相続税対策や老後の資金確保などのため土地や建物の売却ニーズが発生すると、希薄な関係性に起因してトラブルが起きやすい。加えて、1筆の土地に借地権者が10世帯以上存在することもあり、当事者間での解決が難しい。さらに、こういった住宅の底地は、1億円を下回るような小規模物件が多数を占め投資の対象にはなりにくく、放置されている土地も多い。
これらの底地に関して、接道義務を満たす分筆を行うなど複雑な権利関係を調整し、土地の価値を上げて流動性を回復する事業モデルで成長を続けるのは、サンセイランディック。1991年から底地事業を開始し、「リーマン・ショックや東日本大震災、今回のコロナ・ショックと、不動産市場がまったく動かなくなるという状況も経験したが、底地の取引は主に相続を機に発生するため、景況に左右されず底堅い」と今福規之サンセイランディック営業本部長は話す。同社が手掛けるビジネスは、底地を購入後、借地人に売却することで土地と建物の所有権を同一にする事例が約8割を占める。旧法が適用される底地と借地権は流動性の低さから単体では価値を毀損しているが、両者の所有権が同一となることで不動産本来の価値を取り戻すため、底地・借地権ともに単体で第三者へ売却するより高値での取引きが可能となる。
事業を後押しするのが、国の制度改正。2021年4月、不動産登記法改正等、所有者不明土地関連法案が参議院で可決成立。2016年には410万haと言われた所有者不明の土地は、2040年には720万haと北海道の面積に迫る規模が試算されており、国が本格的対策に乗り出した。2024年に改正法は施行される見通しで、相続人は土地の取得を知った日から3年以内の登記申請を義務付けられる。すでに自治体によっては、所有者不明土地に関して相続人を調査し通知を行うなど対策を開始。その結果、これまで無自覚に土地を眠らせていた相続人が売却に動く案件が増加すると見られる。事業への追い風を受け、サンセイランディックは、物件が小規模であることから個人投資家向けにクラウドファンディングを試行。2019年から3度にわたってファンドを組成し、3号ファンドでは2%の利回りで1億円を集めた。
リートやファンド、機関投資家から個人投資家まで底地事業への投資は、徐々に裾野を広げて拡大している。「こんな土地が売れるとは知らず、有難いという声を地主様からいただく」という今福営業本部長。「コロナ禍のなか、この安定性、安心感は代えられない」と投資家の反応を話す西羅社長。今後は、コロナ禍を耐える資金繰りのために、企業が保有する物件の底地を売却する案件が増える見通しもある。底地への理解が進むにつれ、安定性・安心感への評価が高まり、底地投資市場は拡大を続けていきそうだ。
2021/06/05 不動産経済ファンドレビュー